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「それはお前も変わらんだろ」
「あいつには────敵いませんよ」
この7年で、皆それぞれの道を進むようになった。
フェロー時代の目の輝きのまま、新たな問題と向き合っている。
────命の、選択だ。
「ま、フェローではお前が一番まともだな」
「うっ…あの頃は大分荒削りでした…」
「その謙遜癖は
平木、というのは母の旧姓だ。
「目元がよく似ている。
…あいつに似なくて良かった」
「黒田先生、ほんとに父と仲良かったんですか?」
時々こうやって人の悪い笑みを見せるもんだから、仲が良かったのか悪かったのか、どちらか不安になるときがある。
「墓参り、行ってやらんとな」
「行きたいんですけどねぇ…なかなか時間が取れなくて」
そう言って苦笑する。
私を必要としてくれるのは非常に嬉しいけれど、専門以外のオペを頼んでこないでほしいというのが本音でもある。
「医者は身体が武器だ。
くれぐれもぶっ倒れるな、お前が倒れたらあそこは回らん」
「承知してます」
「……無理に手術を受けろとは、俺も言わん。
だがあいつの────あいつらのためにも、手術台の上での最期はやめてやれ」
そう言われて、思わず押し黙った。
選択肢に揺れている自分がいる。
「この選択に…正解はあるんでしょうか」
「どれを選んでも、誰かが悲しむことにはなる」
「…っ、それなら、言わないままでいいです」
誰かを傷つける選択を進んで選べるほど────私は強い心の持ち主じゃない。
むしろ小さいときは引っ込み思案だったほうだ。
「……長い休みが取れたら、あいつに診てもらえ」
「そうします」
黒田先生は、私の決断には何も言わない。
いつもそうだった。
彼は────11年前の事故で私を担当してくれた、両親の同期だ。
そして二人が亡くなってからの、私のもうひとり目の保護者だ。
「……誰かに聞いてもらうのって、こんなに胸のざわつきが治まるものなんですね」
俯きながら言ったため、黒田先生がどんな顔をしているかはわからない。
ただ二人の間には────終始穏やかな空気が漂っていた。
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あやみん - 名取先生が、自分に、恋したなんて、最高です!!!!! (2019年8月19日 12時) (レス) id: ac50c68a33 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 16話、朝日は登りつつではなく朝日は昇りつつ、ではないでしょうか? (2019年2月10日 15時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 14話、以外にも耕作だった。ではなく、意外にも耕作だった。ではないですか? (2019年2月2日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 13話冒頭、横峯さんではなく横峯ではないですか?意図されてでしたらすいません (2019年1月18日 22時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
rabbit - 32の下から9行目「手術中にに」となっています。間違っていたらごめんなさい。 (2018年10月6日 23時) (レス) id: fec1ec90ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月1日 0時