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そう言った彼に、何も言えなくなってしまう。



「……僕は医者には向いていません」



────そんなの誰にもわかんないよ。



きっと彼女なら、すんなりとこんなことが言えたりするのだろう。



初療室に沈黙が落ちた。



でも、私は…私が言ってあげられることは。



「ダメージコントロールのポイントって何だかわかる?」




そう問えば、思ったとおり基本の答えが返ってくる。



うん、それも大事。



でもね、灰谷先生。



「ダメージコントロールの一番のポイントは────臆病であること」



ぴくり、と彼の肩が動いた。



そして、訳がわからない、と言った様子の顔でこちらを振り向く。



「秋本さんの場合、あのまま無理にオペを続行すると、最悪の事態になっていたかもしれない。

あのとき、このまま手術をやるのは危ないって一旦中断したから、いま秋本さんは生きてる」



その判断ができたのは────そう言いながら、パソコンの画面に向かっている藍沢先生の後ろ姿に視線を向ける。



そして、今ごろ夢の中に旅立っているだろうAに、思いを馳せる。



「藍沢先生や香坂先生にも、臆病な一面があったからよ」



いくら凄い技術を持っていたって、彼らも人の心を持っている。



そして臆病さは、誰の心にもあるものだ。



「…灰谷先生が医者に向いてるかどうかはわからない。

私だって…毎日向いてないって思うし。

だけど────臆病でいることも、医者の素質であると、私は思う」




ああ、Aみたいにもっと気の利く言葉で伝えてあげたいけど、私にはこれが精一杯なぁ。



「────シアンの匂いは、感じる人間と感じない人間がいる」

「…え」



藍沢先生が急にそんなこと言い出すから、何のことかと思った。



「感じるのは40%だ。

…お前はたまたまその40%に入っていた。

それで、患者と冴島と、香坂の命を救うことに貢献したんだ」



そっか、だからあのときAは灰谷先生に…。



灰谷くん、匂いある?って聞いたんだ。



それが────彼女の希望だったんだ。



「……やっぱり凄いなぁ、Aは」



7年前からその実力はずば抜けてたけど、海外に行って帰ってきてから、より視野が広がって、先を見透す力が増しているのがわかる。



やっぱり向こうで影響受けたんだろうなぁ…。



早く終わらせてしまおうと、バインダーの書類に手をつけた。

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作品ジャンル:恋愛
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あやみん - 名取先生が、自分に、恋したなんて、最高です!!!!! (2019年8月19日 12時) (レス) id: ac50c68a33 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 16話、朝日は登りつつではなく朝日は昇りつつ、ではないでしょうか? (2019年2月10日 15時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 14話、以外にも耕作だった。ではなく、意外にも耕作だった。ではないですか? (2019年2月2日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 13話冒頭、横峯さんではなく横峯ではないですか?意図されてでしたらすいません (2019年1月18日 22時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
rabbit - 32の下から9行目「手術中にに」となっています。間違っていたらごめんなさい。 (2018年10月6日 23時) (レス) id: fec1ec90ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月1日 0時

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