コード・ブルー -Blue steelyard 2-

-星屑のノクターン- ページ40

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(香坂)

「やっほー野犬くん、元気にやってる？」

『………なんや、朝っぱらから元気やな』



朝っぱら、ねぇ。



ちらり、と腕時計を確認してため息をひとつ。



「もう2時だけど、どこが朝なわけ？」

『は？………うっわやば！

二日酔いのせいで寝すぎたわ…』

「まあ久々の休みだもんね、わかるよその気持ち」



うんうんと頷きながら、キャリーを引っ張って歩き出す。



『そーいやおまえ、今日から翔北やっけ』

「正式には明日からだけどね。

いやー…日本実に7年ぶり」

『ほんまかいな。

ええんか？旦那に迎えに来てもらわんで』



私結婚してないけど、なんで旦那？



『……あーすまん。

聞いた俺がアホやったわ』

「…？

まぁ、いいけど。

あ、それより返事は？貰ったんでしょ？」

『は？何の返事や？』



あ〜〜もう！じれったいなぁ〜！！



「だ、か、ら！

プロポーズの返事！恵ちゃんから貰ったんでしょ」

『……俺プロポーズなんてしてへんけど？』



え？



私の記憶が正しければ、1年前に受けたLINEで確か最後の文章が────。



と、時差ボケの頭をフル回転させていたところで、かちりと歯車が噛み合った音がした。



そうだ…この人………知らなかったんだ。



『おーい香坂？

なんや、気になるやんけ、教えろや』



「言ってあげてもいいけど……後悔しない？」

『男に二言はあらへんで』




なんや、大阪戻ってから熱血になってへんか？



おっと、関西弁がうつりそうだ。



「………吾輩は猫である。

名前はまだない。」

『どこで生まれたかとんと見当がつかぬ。

何でも薄暗いジメジメしたところで、ニャーニャー泣いていたことだけは記憶している。

夏目漱石がどないしてん？』



なんでそれは知ってるのに、これは知らなかったんだか…。



「漱石が教師をしていた時代、生徒からI love you．はどう訳すんですか？と聞かれて、彼はこう答えたんだよ」







────────月が綺麗ですね、と。






『……………は？』



電話の向こうでさぞ抜けた顔をして、それからドタバタという音と絶叫に近い叫び声が聞こえて、私はそっと通話を切った。









……ちなみに恵ちゃんのお返事は、今年も晴れてよかったね！だったそうな。



番外編 野犬は獲物を逃さない -Shoot the heart-

-Fin-

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