-9cm- ページ36
「………なぁんだ、急用できたなら電話ぐらいしろっての!
変なところで気ぃ使うんだから…ねぇ白石?」
緋山先生の声が、遠くに聞こえる。
「え………あ、うん。
そうだね……」
「あの、もしかして京先生、話されてませんでしたか?」
・
「────────今日いっぱいで翔北、辞められるって…」
今日の天気は、朝から雨で、昼過ぎには曇りに変わっていた。
天の川は、雲が晴れなければ見えることはない。
そして天の川がなければ────
織姫と彦星は、会うことが出来ない。
ねぇ、神様。
これはあなたの────いたずら、ですか?
それからのことは、よく覚えていない。
緋山先生に引きずられるようにして救命救急の医局に戻って理由を話すと、橘先生と三井先生は顔を伏せた。
「おふたりは…知ってたんですか?
じゃあ、どうして…!」
緋山先生が三井先生に詰め寄る。
落ち着かせるように、三井先生は彼女の肩に手を置いた。
「……京から言われてたのよ。
頼むから、あなた達には言わないでくれ、って」
────そんなん言われたら俺、最後の日まで普通になんてしてられませんから。
だからお願いします、橘先生、三井先生。
「あの、先生は、どちらに…?」
おそるおそる、と言った様子で冴島さんが尋ねる。
「大阪市立総合医療センターだ。
心臓血管外科の先生が足りてなくてな。
本来なら手先の器用な香坂に行ってもらいたかったんだが…あいつはいま海外だからな。
……20時発の飛行機で大阪に向かうと言っていたよ」
時計の針は、7時45分を指している。
────あぁ、きっともう空港にいる。
「……あいつがおにぎり持ってきたのってさ、来年はもう漬物も持ってこれないから?」
藤川先生の言葉に、みんな一斉に彼を見る。
彼なりの、ごめんなさいだったんだろう。
あのあたたかいごはんの甘さは、まだ覚えている。
「…っ……あの、バカ…!
ンなところで、京都男子っぷり発揮すんな…!!」
緋山先生の声に嗚咽が交じる。
いつも喧嘩腰だったけど、仲良かったもんね。
藍沢先生だって、エースどうしで手術して、きっと言葉にはしないけど、とてもやり甲斐があって。
藤川先生とは、いつも他愛ない話をしてて、いつの間にか関西弁を喋れるようになってて。
それから────…
残り…9cm。
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彩架(プロフ) - 3話の「始め」ではなく「初め」ではないですか? (2018年10月13日 23時) (レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 話に話を咲かせる、ではなく、話に花を咲かせる、ではありませんか? -14cm-です (2018年9月28日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - すいません、先程の書き込み、訂正させてください。「ステンド」ではなく、「ステント」ではありませんか? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生の考えてること、何個目かはわかりませんが…、「それは」の後の「、」が「,」になってます (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生が一番最初に考えてること、ステントグラフトになっています。ステンド、ではないです? (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月27日 12時