-13cm- ページ32
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(京)
さて、職場に差し入れをしてからはや1週間。
俺の元には相変らず実家へのお礼に…とクッキーやらゼリーやら、果物が届けられる。
ん…まぁ有難いねんけどさ。
────これ、全部持って帰んの？
心外の医局の俺の机の上には、山のように積まれた包装紙に包まれた箱、箱、箱、一部籠────バレンタインか。
「断るわけにも、いかんしなぁ……」
実際両親も喜んでくれるし、兄貴の息子────つまり俺の甥っ子も、たくさんのお菓子やゼリーや、直接送られてくるジェラートなどを、とても楽しみにしているのだ。
とりあえず、何回かに分けて車に運ぶか。
よっこいせ、と情けないかけ声とともに箱たちを持ち上げ────ん？
「…うわあ焼酎……絶対部長やなこれ…」
あとでお礼言いに行かな、と決めて、気合いを入れて焼酎片手にさげて、再度箱を片手に抱え……あ。
「………前見づらー…」
……まあエレベーターまでそない距離ないし、大丈夫やろ。
はよ行こ、と少し重たい足を駐車場へと引きずって行く。
ケイ頑張れーという同僚の声に、おー、と返事を返してしばらく、エレベーターまでもう少しというところで、左手に抱えていた箱の一部が、ふわりと浮いた。
「────持つよ」
開けた視界の左側にいたのは、白石だった。
エレベーターの閉ボタンと階数ボタンを押してくれた彼女におおきに、と言ってから、沈黙が落ちる。
お互い何も話すことなく、そのままもう人往復目に差しかかったところで、
「あの」
「あのさ」
うっわナニコレ、まじ気まずい……。
「はは、そちらからお先にどーぞ」
「あ…うん。
あのね、京くんへのお礼、個別じゃなくて全員で飲みにでも行こうって話になって」
お、そりゃええ話やん。
「いついつ？」
「明明後日。
予定空いてる？」
一瞬、時が止まったような気がした。
「…大丈夫やで。
ほんならこっちの仕事片付けたら救命の医局行くわ」
「まってるね。
あ、あと藍沢先生も来てくれるから」
「りょーかい。
……ここでええよ」
病院の入口で彼女の腕にある箱を、ひょいと片手で掻っ攫う。
ちなみにもう片方は、果物だ。
「ほな、おおきにな」
「ううん、このくらいしか手伝いないから」
気をつけて、と笑う白石に、そっちもなと返して、俺は駐車場へ歩みを進めた。
7月4日 残り、13cm、
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3271人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
彩架(プロフ) - 3話の｢始め｣ではなく｢初め｣ではないですか？ (2018年10月13日 23時) (
レス) id: d02e226a01 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 話に話を咲かせる、ではなく、話に花を咲かせる、ではありませんか？ -14cm-です (2018年9月28日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - すいません、先程の書き込み、訂正させてください。「ステンド」ではなく、「ステント」ではありませんか？ (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生の考えてること、何個目かはわかりませんが…、「それは」の後の「、」が「，」になってます (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - -18cm-の京先生が一番最初に考えてること、ステントグラフトになっています。ステンド、ではないです？ (2018年9月21日 17時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ayanel
| 作成日時：2017年7月27日 12時
