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「引火するぞ、離れろ！」
「え、────」
バンッと大きな音がして、炎と火花が辺りに舞い散った。
「カッター中止！消化剤！」
「香坂先生！」
雪村の声にはっとしてそちらを見やれば、車から離れた場所で香坂が頬を手で押さえていた。
「大丈夫か」
「へいき…逃げるの遅れて火の粉が当たっただけよ」
駆け寄ってその手をどかせば、確かに頬には小さな火傷の痕があり、本人は俺を見上げて大丈夫だと苦笑する。
その笑みを見せられると、何も言えなくなるのは昔からだ。
ほんとうにこいつは、俺のことをよくわかっている。
無事鎮火した状況を見て、彼女はふたたびレスキューを振り返った。
「状況は？」
「鉄筋がガソリンタンクを傷つけていて、切断の際の火花が引火したんだと思います。
怪我を負わせてしまい、申し訳ないです…」
「いえいえ、大したことないので気にしないでください。
となると、電動カッターは使えませんね…」
「ええ、エアソーで切ります」
「どれくらいかかりますか」
「1時間はかかるかと…」
────厳しいな。
と、またしても雪村が先ほどよりも切羽詰まった様子で声をあげた。
「橈骨動脈の触れ、弱いです…！」
「ルート増やす。
なんとかしなきゃ…もたない…」
焦りの表情が見える香坂だが、俺も内心余裕があまりない。
「前は3メートル、後ろも恐らく2メートルはあるだろう」
「一気に抜ける長さじゃないね…」
ふたりで冷静に分析してから、香坂がはっとして息子の剛志さんのほうを見やる。
不安にさせただろうか、と雪村に目配せをすれば、彼女はすぐに剛志さんの横へ駆け寄った。
「心配…ですよね。
でも危険ですから、もう少し向こうで待ちましょうか」
「…別に心配してません。
ただ後味わるくて。
────ひとりで惨めに死ねって、言った後だったから」
ぴくり、とラインを新しくとっていた香坂の手が震えた。
「え……」
「そしたらいきなり、船が揺れて…」
ラインを取り終え首筋に手を滑らせた香坂のまとう空気が、いっそう張りつめたものへと変わった。
「だめ、頸動脈触れない」
「…開胸して、腹部への血流を遮断しよう。
香坂、アシスト頼む」
血液を全身にめぐらせれば、まだ命は繋げられる。
だが────。
「雪村さん、開胸セットと遮断鉗子準備して」
「メスくれ」
「はい」
てきぱきと器具を渡す雪村の手さばきも、夏に比べて随分と成長したものだと思った。
────手本がいいからだろうな。
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ひな - めっちゃ面白くて最高です！お忙しいと思いますが更新楽しみにしてます！ (2月8日 19時) (
レス) @page42 id: 7bff09c70b (このIDを非表示/違反報告)
murasaki(プロフ) - 初めまして！1番最初から一気に読みました！更新楽しみにしてます (11月30日 21時) (レス) @page42 id: e474591311 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - season1、3を一気に読み、劇場版もあっという間に読んでしまいました。とても感動しました！更新楽しみに待ってます！ (2021年9月7日 22時) (レス) id: 247691cc0f (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています。更新停止のままですが更新されるのでしょうか？ (2021年8月2日 18時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - とても大好きな作品で、思わず一気読みしてしまいました！更新頑張ってください！応援しています！ (2021年8月2日 8時) (レス) id: 44a0b6bd0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel | 作成日時：2018年11月29日 23時
