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「あの」
「はい？」
耕作の容態を一度チェックしたのちに出たICUの前の待合スペースで、とあるご両親らしき人に呼び止められた。
この2日、ほとんどの時間をICUに篭っていた私は、あいにくこの事故で運ばれてきた患者さんの名前と顔は軽くしか頭に入っていない。
確か、岡部達也くんのご両親だ。
念のためにお名前を、と口を開こうとしたとき、すっと横に誰かが立った。
「香坂先生、代わります」
「灰谷先生…」
それでもじゃあよろしく、とは離れられず、一歩下がったところでやり取りを見守る。
ご両親が差し出したのは、臓器提供の承諾書だった。
それを見たとき大体の察しがついて、悩んでるだろうなぁと思わず灰谷先生の顔を見上げる。
「いいんですよね、これで」
父親の物言いは、自らを納得させているように聞こえた。
うわずった声で続ける父親の言葉を聞きながら、私は頭の片隅でぼんやりと自分の父親のことを思い出していた。
「どうしていいかわかりません…手を握ればまだ温かいし、うっすらと髭も生えたりしてる…本当に、死んでるなんてとても…」
私がもしこんな状況にあったら、彼はこんなにも私を心配してくれたのだろうか。
世界でたったひとりの、血を分けた娘を。
「でも、あいつの最後に示した意思がこれなら、叶えてやるのが親かなって」
────それでも、私は生きている。
両親が命を賭して守ってくれた、だから。
────でも、それを私が言うのは、彼の成長にはならない…よね。
父親から目線をそっと灰谷先生へと移せば、彼は必死に言葉を探しながら、子どもの死を受け入れなければならない両親の言葉を受け止めていた。
「……正しいかどうかは、誰にもわかりません」
そのわずかに震える背を慰めのように軽く撫で、私は口を開く。
「ですが、達也くんの願いは……誰かのなかで、これからも生き続けます」
何か思うことがあったのか、目を見開いてこちらを見つめてくるご両親に、私は大きく頷いた。
そのころ、雪村さんと母親の沙代さんの間に進展があったことを横峯先生から聞いたのは、その日のお昼の休憩時間だった────。
「そっ、か…。
ゆっくりでいいから、向き合っていけるといいな」
家族の形は、人それぞれだ。
けれど、向き合えないまま失ってしまうのが何よりもつらいことを、自分はよく知っている。
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ひな - めっちゃ面白くて最高です！お忙しいと思いますが更新楽しみにしてます！ (2月8日 19時) (
レス) @page42 id: 7bff09c70b (このIDを非表示/違反報告)
murasaki(プロフ) - 初めまして！1番最初から一気に読みました！更新楽しみにしてます (11月30日 21時) (レス) @page42 id: e474591311 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - season1、3を一気に読み、劇場版もあっという間に読んでしまいました。とても感動しました！更新楽しみに待ってます！ (2021年9月7日 22時) (レス) id: 247691cc0f (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています。更新停止のままですが更新されるのでしょうか？ (2021年8月2日 18時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - とても大好きな作品で、思わず一気読みしてしまいました！更新頑張ってください！応援しています！ (2021年8月2日 8時) (レス) id: 44a0b6bd0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel | 作成日時：2018年11月29日 23時
