Determination. -決意- ページ31
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(京)
医局に戻ってきてからパソコンのモニターを見つめ続ける白石をソファから眺め、俺はひとつ瞬きをした。
どう声をかけるべきだろうか──────自分の正直すぎる言葉は、かえって彼女を傷つけてしまうだろうかと思うと、開いた唇から吐息だけが漏れていく。
彼女が自分を責めているのは重々わかるのに、かける言葉がうまく見つからない。
そこにこちらも沈んだ顔をして藤川が帰ってきた。
よ、と片手を上げるとその視線が俺の左足へ、そしてデスクの白石へと順番に流れていくが、いつものように明るい声がかかることはなく。
と、その視線が何かをとらえたようだった。
デスクの上の可愛らしいラッピングが施された2枚のDVDには、『藤川先生』『冴島さん』と書かれた付箋が貼られており、それを見た藤川がはっとする。
「そういや今日だったんだな、俺の結婚式」
「…そうだね」
「なんか色々ありすぎて忘れてたよ」
「なんや、言うてくれたらお祝いの漬物くらい持って来たったのに」
俺の言葉に小さく笑った白石は、また目を伏せた。
「それ、もらっていいか？」
「うん」
「サンキュー。
大変だっただろ、どうせみんな文句ばっかで」
「うん…みんな嫌がった」
やっぱりなぁ、と言って笑う藤川は、文句を垂れる緋山の姿でも思い浮かべているんだろう。
「緋山とか最悪だったんじゃない？」
「よくわかってるね」
ほら、当たりよった。
そんな会話も長くは続かなくて、沈黙が医局を包む。
しかし、それを破ったのは意外にも白石本人だった。
「……ひとりだけ…正確にはふたりだけど。
すんなり撮らせてくれたんだよね」
「香坂と……藍沢か？」
「そう。
撮ってるとき…Aがすごく嬉しそうにしてた」
「あぁ、あいつは意外と優しいからな。
…口が悪いだけで」
「────うん」
そこから口をつぐんだ白石に藤川は一度俺に目線を投げてから医局を出ていく。
静まり返った医局に、白石のすすり泣きはやけに大きく聞こえた。
片足を引きずりながら、震える肩をひとつ叩く。
「……おまえのせいや、ないで」
うん、とまた白石は頷く。
────やるせない、悔しい、つらい。
それでも、前に進まねばならない。
現にあいつはいま、必死に進もうとしているのだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7331人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひな - めっちゃ面白くて最高です！お忙しいと思いますが更新楽しみにしてます！ (2月8日 19時) (
レス) @page42 id: 7bff09c70b (このIDを非表示/違反報告)
murasaki(プロフ) - 初めまして！1番最初から一気に読みました！更新楽しみにしてます (11月30日 21時) (レス) @page42 id: e474591311 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - season1、3を一気に読み、劇場版もあっという間に読んでしまいました。とても感動しました！更新楽しみに待ってます！ (2021年9月7日 22時) (レス) id: 247691cc0f (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています。更新停止のままですが更新されるのでしょうか？ (2021年8月2日 18時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - とても大好きな作品で、思わず一気読みしてしまいました！更新頑張ってください！応援しています！ (2021年8月2日 8時) (レス) id: 44a0b6bd0a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ayanel | 作成日時：2018年11月29日 23時
