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やがて、スクラブからのぞく日焼けのしていない白い喉に、くっと力が込められたのがわかった。
「………めずらしい、泣き虫、ね…」
絞り出した声は過呼吸を繰り返したせいで吐息のように頼りなかったけれど、それでも口調はいつもの彼女のままで安心する。
生きている──────そんな当たり前のことなのに、どうしてこんなにも心が安堵に包まれて、それでいて苦しいのかは、もうずいぶん前に知っている。
忘れられるのだけは、もういやだ。
だから。
「……無事で、よかった…」
ぽつりとこぼした俺の言葉に香坂先生は瞬きをすると、やわらかく笑みを返してくれた。
「……死ねるわけないでしょう…まだ、救いたい命がある、から…いてて」
そう言いながら起き上がってくる彼女の顔がしかめっ面になっているのを見ると、背中の痛みは引いていないようで思わずその細い肩をつかむ。
「だめですよ、せめて点滴が終わるまでは」
「大丈夫、自分の身体のことはわかってる。
…ごめんね、心配かけて。
恵ちゃんにはあとでちゃんと怒られるから」
みるみる取れていく点滴のテープに続いて管をためらいなく抜こうとしたので、さすがに慌てて止めに入る。
が、大きな薄茶の瞳に自然と上目遣いでしばし見つめられると、あえなくため息が漏れた。
痛くないように注意を払って管を抜けば、彼女がすかさず止血のためのパッドを貼る。
「ありがと」
そう言ったときの声は、顔は、まなざしは。
もう、ひとりの医者でしか、なかった────。
先程まで寝ていたのが嘘のような身のこなしでベッドから立ち上がると、短くなった髪を手早くまとめながら駆け足で処置室を出ていく。
背中だって痛むだろう、疲労で身体も限界だろう、だからせめて無理だけはしてほしくない。
様々な感情が心の中を引っ掻き回して、言葉は喉の奥で絡まった。
その小さな背中は、彼女の隣に並ぶにふさわしい彼には、きっとどんなに手を伸ばしても届かない。
それでも、ずっと追いかけるのだろう。
それは、いま思えば確かに恋で。
憧れだったのだから────。
────ぱたん。
処置室のドアが閉まる音がしても、俺はまだその場から動くことはできなかった。
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ひな - めっちゃ面白くて最高です！お忙しいと思いますが更新楽しみにしてます！ (2月8日 19時) (
レス) @page42 id: 7bff09c70b (このIDを非表示/違反報告)
murasaki(プロフ) - 初めまして！1番最初から一気に読みました！更新楽しみにしてます (11月30日 21時) (レス) @page42 id: e474591311 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - season1、3を一気に読み、劇場版もあっという間に読んでしまいました。とても感動しました！更新楽しみに待ってます！ (2021年9月7日 22時) (レス) id: 247691cc0f (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています。更新停止のままですが更新されるのでしょうか？ (2021年8月2日 18時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - とても大好きな作品で、思わず一気読みしてしまいました！更新頑張ってください！応援しています！ (2021年8月2日 8時) (レス) id: 44a0b6bd0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel | 作成日時：2018年11月29日 23時
