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「足元気ぃつけ────」
────バチッ！
そんな京先生の声をかき消すように、すぐそばで爆発音が聞え、暗闇のなかで火花が視界の隅で弾けた。
それはやけに鮮やかに私の目に映り、そして脳裏へと駆け抜ける。
いま思えば、それは終わりへの始まりだったのかもしれない────。
「香坂！」
藍沢先生の鋭い声に、私ははっと自分の足元を見た。
自分の踏み出した足が、断線したコードをまたぐ────けれど、斜め後ろを走る雪村さんは、その存在に気がついていない。
「…っ、だめ、ゆきむらさ────っ！」
声を上げながら反射的に半身を後ろへ反らして彼女へ両腕をのばしたのと、胸に大きな衝撃があったのは、ほぼ同時。
私の広げていた腕に突っ込んできた雪村さんをとっさに受け止めながら、顔を上げた。
「あ、…」
一瞬目が合う、こちらに向かって両手を突き出した彼と。
こちらに手を伸ばしている藍沢先生が、雪村さんの肩越しに私を見て、ほんとうに小さく笑った。
苦しそうに、顔をゆがめて────。
だめだ、このまま後ろに倒れたら。
彼は、どうなる？
────のばした腕は、届かない。
あのときと、同じように。
“祈るように握った母の手も”
“涙で霞む視界のなかで、懸命に処置をした恩師の手も”
“愛する大切な人にさえも、届かない────”
背の高い雪村さんと、救命の中でいちばん小柄な私。
さすがに勢いを殺しきれなかった私の身体は、階段の踊り場の柵に激しい音を立ててぶつかる。
「…っ！」
背中が鈍い痛みを訴えて、ぶつかった衝撃で止まっていた呼吸が再開して、肺の空気を吐き出した。
胸が、引き裂かれるように痛かった。
その途端、なにか重いものが水に落ちた音がして。
────いま聞こえたのも、ぜんぶ。
こちらに腕をのばした瞬間、薄い唇が、ほんのわずかに悲しげな笑みを彩ったのも。
「うそ、やろ…」
患者の処置を中断して、愕然とする京先生も。
私のそばで口元を両手で押さえて震える雪村さんも。
「………っ、…」
夢であれば、どれだけよかっただろう────。
「……────こう、さく────」
なんとか絞り出した私の声は、吐息のようにかすれて、情けないほどに震えていた。
────ねぇ、嘘だと言って。
そんな顔をするなら、嘘だと、言って────。
水の中へとうずもれた、届かぬ声と、思いと。
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ひな - めっちゃ面白くて最高です！お忙しいと思いますが更新楽しみにしてます！ (2月8日 19時) (
レス) @page42 id: 7bff09c70b (このIDを非表示/違反報告)
murasaki(プロフ) - 初めまして！1番最初から一気に読みました！更新楽しみにしてます (11月30日 21時) (レス) @page42 id: e474591311 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - season1、3を一気に読み、劇場版もあっという間に読んでしまいました。とても感動しました！更新楽しみに待ってます！ (2021年9月7日 22時) (レス) id: 247691cc0f (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています。更新停止のままですが更新されるのでしょうか？ (2021年8月2日 18時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - とても大好きな作品で、思わず一気読みしてしまいました！更新頑張ってください！応援しています！ (2021年8月2日 8時) (レス) id: 44a0b6bd0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel | 作成日時：2018年11月29日 23時
