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(藍沢)
────寒い。
本能的に近くにあったぬくもりを抱き寄せる。
明け方の冷たい空気に思わず身体を震わせながら、うっすらと目を開いた。
自分の腕の中や枕にこぼれる薄茶の髪と、ほのかに鼻先をくすぐる石鹸のような匂い、さらに穏やかな寝息が聞こえて、脳は一瞬にして覚醒した。
そして、昨日寝る前に彼女が言っていたことを思い出す。
“うなされて起こしたらごめんね”
いまでもよく両親の事故の夢を見るのだという────それはきっと、これからもずっと消えることなく彼女の中で罪の意識を植えつけていくのだろう。
見たところ、特にうなされた様子もなかったようでほっとする。
自分は何もできない────ただ彼女のそばにいて、こうしてぬくもりを与えてやることくらいしか。
彼女が背負っているものを無くしてやることは、どう足掻いてもできやしない。
わかっている、わかっているのに、なんて虚しいのだろう。
枕元に放り投げていたスマホを確認すればまだ6時前。
普段ならそろそろ起き出している頃だが、あいにく起きる気はまだないし、何より腕の中のぬくもりにもう一眠りしてしまいそうだ。
俺は午後からの出勤へ、Aは優輔くんのところへ顔を出しに翔北へ行くと言っていた。
ホテルの荷物は明後日にまとめて、もうそのまま大阪へ発つと。
俺も一度、向こうでの住まいなどのためにトロントに行かなければならない────もしリハビリが深刻であれば、自分がトロントに行く年明けには会えないことになる。
冷静にそこまで考えて、思わず腕の中の小さな身体に回していた腕に力がこもった。
「…、ん」
それに気がついたAが小さくうめいて身じろぐが、起きる気配はない。
いつも、俺達に与えられる時間は少ない。
死の淵に立たされ、絶望の淵に立たされ、何度も悲しみを乗り越えた先にあったものが、こんなにも優しく、それでいて夢のような一瞬のひと時であっても────それでも。
残されたときを埋めるように。
このぬくもりを、匂いを、ずっと覚えている。
だから────。
「………耕作…？」
「…よく眠れたか」
願わくば、腕の中で目覚めたおまえに。
もう二度と、悲しみが降りることのないように。
「うん…おはよう」
────朝日に照らされた細い指に、白銀がきらめいた。
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ひな - めっちゃ面白くて最高です！お忙しいと思いますが更新楽しみにしてます！ (2月8日 19時) (
レス) @page42 id: 7bff09c70b (このIDを非表示/違反報告)
murasaki(プロフ) - 初めまして！1番最初から一気に読みました！更新楽しみにしてます (11月30日 21時) (レス) @page42 id: e474591311 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - season1、3を一気に読み、劇場版もあっという間に読んでしまいました。とても感動しました！更新楽しみに待ってます！ (2021年9月7日 22時) (レス) id: 247691cc0f (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています。更新停止のままですが更新されるのでしょうか？ (2021年8月2日 18時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - とても大好きな作品で、思わず一気読みしてしまいました！更新頑張ってください！応援しています！ (2021年8月2日 8時) (レス) id: 44a0b6bd0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel | 作成日時：2018年11月29日 23時
