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そう────。
切るのは患者の腹であって、鉄筋ではない。
これが、私たちの出した最後の手段。
「腹壁から腹腔内まで切開して、鉄筋から身体を横に外す」
「え…っ」
「…まぁ驚くよね」
すらすらと言葉を並べた藍沢先生に、声を漏らして固まった雪村さん。
「腸管や結腸動脈の処理は？」
「もちろんすべて切断する。
おまえもいるんだ、心強いに越したことはない」
その言葉に、一瞬動きが止まって目を瞬かせる。
患者を挟んで目が合えば、彼は不安か？と首を傾げて聞いてきた。
────嬉しいこと言ってくれるんだから…。
小さく頷いてから、ふっと目を伏せる。
「怖くないと言ったら嘘になるよ。
…一応きく、どれくらい勝算ある？」
「まったくわからない…なにせ経験がない」
「…でも、負けるのは絶対にいや」
知っている、医者が誰よりも負けず嫌いだということを。
お互いがお互いの腕を、いちばん信頼していることを。
ふぅ、と細く長く息を吐き出した私は、身体をよじって車から出ると、剛志さんの近くへ歩み寄った。
「杉原さん。
このままレスキューが鉄筋を切断するのを待つという選択肢もありますが、時間的にも、状況的にも得策とはいえません」
右手が震えている。
脳裏に、頼もしいスタッフリーダの後ろ姿がよぎった。
「────いまから、お父さんのお腹を切り開いて、鉄筋から身体を外します」
「え…」
「私たちも経験のない処置なので、もちろんリスクはあります。
ご家族の同意がないことには始められません。
それから、お父さんに関することを教えてください。
手術歴、服用している薬…情報はひとつでも多いほうが、助かる可能性は高くなります」
自分よりずっと高い位置にあるふたつの双眸は、不安に揺れていた。
それが、車内の父親へと向けられる。
「俺…、11歳のときに、自分で児童相談所に電話したんです。
はだしで家を飛び出して、道で人に携帯借りて。
“父に殺されるかもしれないから助けてください”って」
「…っ」
心を、激情の手に掴まれたような、胸の内から何かがこみ上げるような感覚に襲われた。
それと同時に、寡黙で無愛想だった父の面影が浮かぶ。
最後に抱き上げてくれたのは、最後に名前を呼んでくれたのはいつだっただろう────。
けれど。
“それでも、大好きだったから”
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ひな - めっちゃ面白くて最高です！お忙しいと思いますが更新楽しみにしてます！ (2月8日 19時) (
レス) @page42 id: 7bff09c70b (このIDを非表示/違反報告)
murasaki(プロフ) - 初めまして！1番最初から一気に読みました！更新楽しみにしてます (11月30日 21時) (レス) @page42 id: e474591311 (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - season1、3を一気に読み、劇場版もあっという間に読んでしまいました。とても感動しました！更新楽しみに待ってます！ (2021年9月7日 22時) (レス) id: 247691cc0f (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています。更新停止のままですが更新されるのでしょうか？ (2021年8月2日 18時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
みなみ(プロフ) - とても大好きな作品で、思わず一気読みしてしまいました！更新頑張ってください！応援しています！ (2021年8月2日 8時) (レス) id: 44a0b6bd0a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel | 作成日時：2018年11月29日 23時
