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大丈夫かな、その4人、と心の片隅で心配しつつ、ふたりの会話に耳を傾ける。
「ほかのERで経験ある人たちなんですよね」
「らしいな。
…こいつと違って」
────さりげなく話題に私を放り込むのやめてくださいよ…。
「…使えますか?」
遠慮がちに聞いた冴島さんに、黒田先生は書き終わった搬送記録を渡しながら答える。
「フェローが使いもんになったことが?」
「……おっしゃるとおりで。
あの…、やっぱり私のように黒田先生が指導医、やられるんですか?」
役立たずですみません、の意味も込めてとひとつ頭を下げてからそう聞けば、彼は重いため息を吐いて眉間に皺を寄せた。
────あぁそっか、朝から不機嫌な理由はこれか。
私のフライト前の疑問が解消されたとほぼ同時に、CSから連絡が入った。
『翔北ドクターヘリ、こちら翔北CS』
『翔北ドクターヘリ、どうぞ』
『双葉消防より────ドクターヘリ要請です』
ぞわり。
全身の細胞がその言葉を待っていたかのように反応し、心臓が先程よりも速い鼓動を刻み始める。
『73歳女性、団地三階ベランダより転落です』
轟木さんからの情報を受けて、黒田先生がそれに答える。
「わかりました。
翔北には戻らず、このまま現場に向かいます」
『了解です』
『これより、双葉方面現場へと向かいます、どうぞ』
梶さんの声に合わせて、機体が大きく傾いていく。
合わせて変わっていく景色を横目に、私は頭の中の引き出しから、転落から考えられる症状と処置法を引っ張り出した。
「今日はやけにやる気だな」
「そりゃ、新しい仲間が増えますからね、いまから楽しみです。
そういう黒田先生は、やけにお疲れですね」
「確信犯か…ったく。
気、抜くんじゃねぇぞ」
「もちろんです」
多少なりとも揺れる機内でもつれることなく処置をこなしていたとき、私にだけ聞こえるようヘッドセットのスイッチを入れたのか、黒田先生が無愛想に言った。
「…フェローの中じゃ、お前はまだマシなほうだ」
「……不機嫌だったり褒めたり忙しいですね」
「そこは素直に喜べ、阿呆が」
明日は大雨でも降るんじゃないだろうか。
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ほち(プロフ) - 続きとても気になります……!更新待ってます…! (2月14日 9時) (レス) id: 9d8af713d5 (このIDを非表示/違反報告)
レモン - 更新待ってます!頑張ってください! (2020年1月18日 10時) (レス) id: 572aeb701d (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になってます この作品はもう更新されないのでしょうか? (2019年8月24日 21時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
音夢(プロフ) - 続きが…気になります!! (2019年6月21日 2時) (レス) id: 11609052e1 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - シリーズとても面白くて、1日で読み終えてしまいました!この小説でのコードブルーがとても好きになりました!ちなみに、劇場版は書かれたりするんでしょうか?お忙しいと思いますが、作成されたら飛んで読みに来ます!頑張ってください! (2018年8月1日 18時) (レス) id: 132fe7823f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2018年4月4日 15時