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(白石)

側頭部の大量出血からどう立て直したのか、嫌というほど覚えている。



────何もできなかった自分も、嫌というほど覚えている。



運ばれていくストレッチャーをぼんやりと見ていた私の腕に、何かが当たった。



「…気持ちはわかる。

でも落ち込むのは、患者を救ってからにして」

「香坂、先生…」



言いながら私の腕を引っ張ってくる手は、私のものよりずっと小さくて細い。


けれどその瞳に宿る光は、意思は。



私のものより、ずっと強くて、それでいて頼もしい。



「白石、瞳孔不同は」

「あ…、ありません!」



森本先生の問いにそう答えれば、香坂先生がそれ以上私の方を見ることはなくて。



あたたかい手が、離れていく。



薄茶の髪が、なびいていた。



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(香坂)

「────単独頭部外傷の疑いだ」

「はい!」



もう一度ペンライトを素早く走らせて瞳孔を確認しながら、私は黒田先生のよく通る声に返事をした。



損傷のひどい頭部に私を後ろから押しやったその上司に内心悲鳴を上げつつ、患部に集中する。



「もう一度FASTやってみる?」

「はい…!」




三井先生が差し出したプローブに、緋山先生は表情を引き締めた。



慌ただしく動く初療室でそれぞれの動きにも気を配りつつ、あぁそういえばラインは誰が取っているのだろうかと思い、ふと顔を上げた。



「…あ、っ」



ぱたぱたと、床に血が落ちていく。



見やれば白石先生がラインをうまく取れず、針を刺した腕から出血しているところだった。



────やばい…。



素早く周りに視線を飛ばしたとき、すっと大きな手が伸びた。



「押さえてる」

「ナイスフォロー」



ほっと息をつきながら、聴診器をつけ無表情で遮断鉗子を手にした藍沢先生に声をかける。



と、隣で黒田先生が藤川先生に怒号を飛ばした。



どうやら挫傷の縫合をしようとしたらしい。



「もういい、下がってろ」

「…す、すみません」



ぴしゃりと一喝されて落ち込む藤川先生もそうだが、ラインを取ったきり棒立ちの白石先生を気にかけつつ、私は処置の手を止めなかった。



モニターが鼓動を刻む。



手袋は、もう真っ赤だった。

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作品ジャンル:恋愛
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ほち(プロフ) - 続きとても気になります……!更新待ってます…! (2月14日 9時) (レス) id: 9d8af713d5 (このIDを非表示/違反報告)
レモン - 更新待ってます!頑張ってください! (2020年1月18日 10時) (レス) id: 572aeb701d (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になってます この作品はもう更新されないのでしょうか? (2019年8月24日 21時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
音夢(プロフ) - 続きが…気になります!! (2019年6月21日 2時) (レス) id: 11609052e1 (このIDを非表示/違反報告)
- シリーズとても面白くて、1日で読み終えてしまいました!この小説でのコードブルーがとても好きになりました!ちなみに、劇場版は書かれたりするんでしょうか?お忙しいと思いますが、作成されたら飛んで読みに来ます!頑張ってください! (2018年8月1日 18時) (レス) id: 132fe7823f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ayanel | 作成日時:2018年4月4日 15時

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