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「────ねぇねぇねぇ、頭の中に釘が見つかったって?
オペはいつ?」
興奮気味にトレーを持って白石先生の隣に座ってそう聞いてきたのは、朝ぶりに見た緋山先生。
「釘?」
「うん、釘」
ありえない、という顔をしている藤川先生に頷いている私の横で、白石先生と緋山先生の会話はつづく。
「それより、ご家族と連絡とれた?
オペはそれ待ちかも」
「そうなの?
ようやく長男の会社がわかったけどいなくって。
私もオペ入りたいな…」
そう言いながら彼女が口に含んでいるのは、何かの薬のようで────私はそれを横目に、ほうれん草の胡麻和えを口に運んだ。
「例のばあちゃん、木製の棚に落ちて、そこの釘が鼻から入ったらしい」
「まじで…?」
藍沢先生の補足に、あからさまに痛そうな顔をした藤川先生が、そういえば、と思い出したように声を上げる。
「せっかくこうして集まったんだし、フェローの同期で飲み会しない?
ね?」
「そんな暇あるの?」
何言ってるの、と言いたげな視線を藤川先生に向ける緋山先生に少しだけ同意しつつ、最後の炊き込みご飯を口に運んだ。
彼女の言葉を通訳するように、藍沢先生がこぼす。
「ライバルだから嫌だってさ」
「ちっちゃいねぇ…みんな仲間じゃん、ライバルとか出し抜くとか、そういうのは────」
私がおみそ汁をすする前で、急に立ち上がった藤川先生────どうした?
「お疲れ様です!」
元気よく声を張り上げた藤川先生の視線を辿るのと同時に、視界に青のスクラブが入った。
私の横で止まった人物は、トレーを片手に持った、いまからお昼ご飯らしい黒田先生。
彼は藤川先生の挨拶には何も返さず、淡々と要件を述べた。
「午後、ひとりヘリに乗せることになった」
その言葉に、一気に場の空気が張り詰める。
────この空気、苦手だなぁ…。
「この中でヘリに乗って現場に行きたいやつ」
一斉に手を挙げたのは、藤川先生と緋山先生、そして白石先生。
手を挙げない私と藍沢先生をちらりと一瞥してから、黒田先生は質問を変えた。
「…行って処置する自信のあるやつ」
と、私の横で一瞬自信がなさげに目を泳がせ、挙げた手を下ろしかけた彼女を、黒田先生が見逃すはずもなく────。
藍沢先生がサンドイッチの最後のひと口を頬張ると同時に、私はご馳走様でした、と静かに手を合わせた。
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ほち(プロフ) - 続きとても気になります……!更新待ってます…! (2月14日 9時) (レス) id: 9d8af713d5 (このIDを非表示/違反報告)
レモン - 更新待ってます!頑張ってください! (2020年1月18日 10時) (レス) id: 572aeb701d (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になってます この作品はもう更新されないのでしょうか? (2019年8月24日 21時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
音夢(プロフ) - 続きが…気になります!! (2019年6月21日 2時) (レス) id: 11609052e1 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - シリーズとても面白くて、1日で読み終えてしまいました!この小説でのコードブルーがとても好きになりました!ちなみに、劇場版は書かれたりするんでしょうか?お忙しいと思いますが、作成されたら飛んで読みに来ます!頑張ってください! (2018年8月1日 18時) (レス) id: 132fe7823f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2018年4月4日 15時