リハビリ日記。-1日目- ページ8
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(緋山)
医者の命とも言える腕を骨折したAは、不可抗力であったとはいえ、やはり怒られた。
「…9年経ったらもう少し自分を大事にしてるかと思ったが…間違いだったみたいだな」
黒田先生に。
リクライニングで上体を起こし、沈痛な面持ちでうつむくAのベッドのそばに、指導医のときのあの雰囲気をまとった黒田先生が座っている。
頭からしゅーんと、垂れ下がった耳が見えそうなほどに落ち込む彼女だけど、さすがに私達で止められる相手ではなくて。
いつものように昼休憩を使ってICUに来た藍沢も、どうしたものかと腕を組んで様子を見守っている。
「いまは経験の影に隠れつつあるが、フェロー時代から危なっかしさは変わっちゃいねぇ…。
確かに医者の仕事は人を助けることだ。
だが肝心の医者が死にかけてどうする」
「…返す言葉もございません」
11年前の事故の日、Aを助けたのは黒田先生。
そして彼女のフェロー期間をここ、翔北で過ごすよう、当時の医局長に勧めたのも彼。
いまこうして厳しい言葉を投げかけるのも、彼女の両親が残した希望を絶やさないため────。
と、近寄りがたい雰囲気をまとっていた黒田先生の表情が、ふっとやわらいだ。
「…腕を骨折したんだってな」
「はい。
……先生と同じ、右腕でした」
Aは頷きながら、そっと左手で三角巾に吊られた右腕を撫でる。
9年前、黒田先生が一度失った右腕。
彼女がその右腕を骨折したことに、きっと少なからず抱いた感情があったはずだ。
「……一歩間違えれば…先生と同じ道を、たどっていたかもしれません」
「…まぁ、お前は両利きだからな。
片腕がダメになったとしても、どうせ左腕で医者を続ける気なんだろうが」
「……エスパーですか…」
────いや、それはさすがに私でも分かるわ。
心の中で同意している間にも、話は進んでいく。
「…俺と同じ目に遭いたくなかったら、もう少し自分を大事にしろ。
お前自身のため…そしてお前のことを思うすべての人々のため。
あんまり死にかけると、あいつらの心臓が持たんぞ」
「…それは困ります」
小さく苦笑を浮かべたAに、ひとつ息を吐き出す黒田先生。
「…親子みたい」
「そうだな」
親子ではないけれど、たまには水入らずの時間があってもいいと、いまなら強く思えた。
1日目、黒田先生はやっぱりお父さん。
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りりり(プロフ) - とても楽しませて頂いております。ひとつ気になったのですが、32ページの副題「At the Xintiandi.」だと上海の新天地という地区を指してしまうのではないでしょうか。意図されての事でしたらごめんなさい。 (2018年9月17日 8時) (
レス) id: 539d09e6a1 (このIDを非表示/違反報告)
ffchr09(プロフ) - もう読み終えているのに読み返したくなります。私も秋生まれ天秤座なので、作品にのめりこんでしまいました。お忙しいと思いますが、劇場版も楽しみにしています。 (2018年9月16日 14時) (レス) id: 3038f6a4cb (このIDを非表示/違反報告)
憂依 - 2日間で読み込んでしまいました。読み進めてくほど、感動しました。雰囲気に浸りたくてBGMはずっとHANABIを聴きながら...笑 素敵な作品ありがとうございました。劇場版...お忙しいとは思いますが、楽しみにしてます。 (2018年8月15日 8時) (レス) id: 8dc691da23 (このIDを非表示/違反報告)
S - 最高に面白い作品をありがとうございました！香坂先生の続きのお話しが是非是非読みたいです！香坂先生ロスで泣けます。素晴らしい作品をありがとうございました！！ (2018年8月5日 10時) (レス) id: 223a468b93 (このIDを非表示/違反報告)
ともみ - 最高の作品でした！ (2018年7月1日 1時) (レス) id: 53269475bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年9月27日 0時
