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(新海)
それは、よく晴れた秋の日。
忘れもしない、2度目の奇跡が起こった日。
何気なく様子を見に立ち寄ったICUに横たわる、昨日と何ら変わらぬ小さな身体。
けれど彼女はその身体で、手で、これまで何度も困難と言われてきた命を救ってきた。
日本に帰ってきてからもずっと苦しめられていたであろう、急性冠症候群。
その手術直前に起こった事故。
そしてようやく回復してきたと思った折に────今回の崩落事故。
香坂Aは強いひとだと、皆が思っている。
だが、彼女を見ていて分かったことがある。
強いひとの────その裏に秘めたはかなさに。
薄茶の髪が、初めて出会った夏よりも少しのびたように感じた。
「……せめて、あいつがトロントに行くまでに…起きろよ」
────でないと。
一度蓋をしたこの気持ちに、また気づきそうになる。
小さく呟いたそれは、誰の耳にも届かずに消えていく。
────はずだった。
．
“……新海先生ったら、お母さんみたい”
．
そう言って、目尻をきゅっと下げて笑う、お前の声が────どこか、近くで聞こえた。
「…香坂さん…!?
分かりますか、香坂さん！」
「…、っ!?」
そんな看護師の声に慌てて身を翻せば、香坂はベッドの上で小さく身じろいでいた。
「香坂！」
モニターに異常はない。
俺の声に瞼がぴくりと震える。
そのままゆっくりと、じれったいほどにゆっくりと、長いまつ毛に縁取られたそれが持ち上がって。
ようやくその姿を見せた、まだ焦点の合っていない薄茶の瞳が、秋の日差しを反射して明るくきらめいた。
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(香坂)
────あ、れ…。
目の前で叫んでいる人の顔が、ぼやけてよく見えない。
黒のスクラブ────脳外科のだれか。
耕作は、確か脳外科だったはずで────あぁ、それは数ヶ月前の話だ。
「香坂、わかるか…！」
彼の声はもう少し低くて、胸に落ちるような、そんな感じがするから。
そう、この声は。
────新海、先生…。
消毒液のにおい、左手の薬指にある、冷たい感覚。
────あぁ、夢じゃない。
帰って、これた。
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りりり(プロフ) - とても楽しませて頂いております。ひとつ気になったのですが、32ページの副題「At the Xintiandi.」だと上海の新天地という地区を指してしまうのではないでしょうか。意図されての事でしたらごめんなさい。 (2018年9月17日 8時) (
レス) id: 539d09e6a1 (このIDを非表示/違反報告)
ffchr09(プロフ) - もう読み終えているのに読み返したくなります。私も秋生まれ天秤座なので、作品にのめりこんでしまいました。お忙しいと思いますが、劇場版も楽しみにしています。 (2018年9月16日 14時) (レス) id: 3038f6a4cb (このIDを非表示/違反報告)
憂依 - 2日間で読み込んでしまいました。読み進めてくほど、感動しました。雰囲気に浸りたくてBGMはずっとHANABIを聴きながら...笑 素敵な作品ありがとうございました。劇場版...お忙しいとは思いますが、楽しみにしてます。 (2018年8月15日 8時) (レス) id: 8dc691da23 (このIDを非表示/違反報告)
S - 最高に面白い作品をありがとうございました！香坂先生の続きのお話しが是非是非読みたいです！香坂先生ロスで泣けます。素晴らしい作品をありがとうございました！！ (2018年8月5日 10時) (レス) id: 223a468b93 (このIDを非表示/違反報告)
ともみ - 最高の作品でした！ (2018年7月1日 1時) (レス) id: 53269475bb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年9月27日 0時
