13 ページ15
雪村から連絡を受けた俺達がICUに到着したとき、ベッドの周りでは忙しなく看護師が動いていた。
「5分前に突然意識を失いました。
サチュレーションも低下しています」
雪村の言葉を受けたAが、素早く両目をペンライトで照らす。
「瞳孔不同あります、脳出血かもしれません…出血が藍沢先生の読みどおりなら、止血は…」
「それでも頭をあけるしかない。
ファイバー挿管してオペ室に運ぼう」
挿管しながら、俺は新海と香坂に指示を飛ばす。
「SSS直上の頭蓋骨は残して開頭する。
香坂、その骨にティティングしてくれ」
「はい。
新海先生、それでだめなら…」
「ああ、パッチグラフトを使おう」
この病院で最高峰の腕をもつ外科医ふたりと、オールマイティで卓越した技術をもつ医師の開頭手術が開始された。
ときは一刻を争う。
連絡を受けてサポートで駆けつけた白石が、俺に状況を確認しながら手術室に入ってきた。
「脳出血って？
骨盤骨折だけだったでしょう？」
「14年前の事故が原因だ。
当時保たれていたSSSの癒着が今回の骨盤骨折の衝撃で剥がれた」
「14年前の、事故…？」
疑問を持った白石に、新海が補足として説明を付け加える。
「当時は幸い、損傷部位が自然に塞がっていたんです」
「でもSSSってことは…」
その言葉に、ティティングをつづけていたAが顔をしかめながら頷いた。
「…止血は困難です」
そのとき、雪村が声をあげた。
「血圧測定不能です！」
「だめです、出血止まりません…」
彼女の技術を持ってしても、止血は困難だった。
「脳の前半分は諦めよう。
白石、トロラールベインを避けて支えてくれ」
「分かった」
一度血管を遮断するものの、瞬く間に脳が腫れてきてしまう。
「脳が腫れてきた…！」
「内減圧する」
新海が減圧のため脳の一部を切除するが、症状は悪化するばかりで、回復の兆しが見えない。
モニターの発する甲高い音に、Aの小さな身体が可哀想なほどに震えた。
そして両角が生きていることの証であった波形が、フラットに変わっていく。
雪村が手をのばして、モニターのスイッチを切った。
俺達はただ、立ち尽くすことしかできなかった。
命は、もろく儚い。
ひとたび目を離せば、この手の中から飛び立ってしまうほどに。
手術室を出た直後、白石の隣にいたAの身体が、ぐらりと傾いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4406人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リラン(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます！読むたびに次をもとめてしまう！今後も期待してます！話は変わりますが、少年陰陽師読んだことありますか？何となく文が似ている所があってずっと気になっていたんです。急に質問すみません。もし知らないのであれば申し訳ないのですが… (2019年2月12日 12時) (
レス) id: c050d878db (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 18、大大抵ではなく、大抵では？ (2018年7月4日 20時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
鈴子 - コードブルー好きにはたまらないね\^-^/ (2017年10月14日 21時) (レス) id: bbbfeb8862 (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - いつも更新楽しみにしています！更新される度に続きが気になって気になって！最終回、楽しみにしています！更新頑張ってください！ (2017年9月19日 23時) (レス) id: e98d2ab7a8 (このIDを非表示/違反報告)
藍沢せんせすき - 面白すぎます笑楽しみにしてるので更新頑張ってください^ ^ (2017年9月19日 22時) (レス) id: 0944e50e01 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ayanel
| 作成日時：2017年9月12日 0時
