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「こっちは胸部の原腸切開終わりました。
ICUに移します」
名取先生からいい答えが帰ってきて、Aと頷き合う。
「気道内圧は」
「平均で────20まで下がりました」
「それでいい。
尿量に注意しろ」
「分かりました」
あの藍沢先生と名取先生がスムーズにやり取りをしているのを見て、驚きと嬉しさで胸が高鳴る。
患者を名取先生に任せて初療室を出たとき、入れ替わりで緋山先生が患者とともに戻ってきた。
「福本美代さん62歳、頭部CTは撮ってる。
右前頭葉に脳挫傷あり、左足のデグロービング損傷が酷い。
移します、1.2.3」
「香坂、頭の方任せられるか」
藍沢先生がタブレット端末の頭部CTの画像を、自ら駆け寄ったAに見せながら、素早く彼女に確認をとる。
「…びまん性だと思いますので、ICPセンサー入れて様子見るのが良いかと」
的確な判断を下した彼女に彼もそれがいいな、と頷いて私達は手術用のガウンをまとう。
「えっと…横峯、さん?」
「はい、合ってますよ香坂先生」
「脳外に応援の連絡入れてもらえるかな」
「分かりました」
遠慮がちに聞いたAに持ち前の笑顔で答えた横峯さんは、すぐさまPHS端末を操作し始めた。
しばらくして初療室に入ってきたのは、意外にも脳外科部部長である西条先生だった。
「若い奴らが皆オペに入っててね。
部長が1番暇ってわけだ。
えーっと、こっちか…香坂、どうだ?」
「びまん性損傷で脳ヘルニアの傾向があります。
いまちょうど、ICPセンサーを挿入しようとしていたとこです」
いま頭部を見ているのはAひとりだから、もし万が一彼女が記憶でトラブルを起こしてしまっても、西条先生がいるから大丈夫だろう。
「よし、左側頭葉に入れよう。
サポート任せとけ」
「ありがとうございます。
藍沢先生、脳内の血液循環、問題ないです」
「分かった、こっちもこのまま進める」
────あ、いまの少し前のAっぽい。
敬語は抜けていないけれど、いまの連携はほんの数週間前までの彼女を、優位に私達の脳裏に描き出すことができた。
いつか、またそんな日が戻ってくることを。
────“見えるか”
────“ナイス…右の総腸骨静脈”
またこの2人の言葉のいらない連携が見られることを。
まだ、誰ひとりとして諦めていなかった。
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リラン(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!読むたびに次をもとめてしまう!今後も期待してます!話は変わりますが、少年陰陽師読んだことありますか?何となく文が似ている所があってずっと気になっていたんです。急に質問すみません。もし知らないのであれば申し訳ないのですが… (2019年2月12日 12時) (レス) id: c050d878db (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 18、大大抵ではなく、大抵では? (2018年7月4日 20時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
鈴子 - コードブルー好きにはたまらないね\^-^/ (2017年10月14日 21時) (レス) id: bbbfeb8862 (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - いつも更新楽しみにしています!更新される度に続きが気になって気になって!最終回、楽しみにしています!更新頑張ってください! (2017年9月19日 23時) (レス) id: e98d2ab7a8 (このIDを非表示/違反報告)
藍沢せんせすき - 面白すぎます笑楽しみにしてるので更新頑張ってください^ ^ (2017年9月19日 22時) (レス) id: 0944e50e01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年9月12日 0時