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(藍沢)
初療室の入口でICUに向かう患者に付き添う緋山と目が合ったが、お互い何も言わずにすれ違う。
モニターの早い音が連続して響く中、橘先生の診ている患者に手を伸ばした。
「入ります」
「おぉ藍沢、頼む」
「また今日は随分バタバタしてますね」
「んー?まぁな。
Aはどうした?」
「あいつなら…」
「ストレッチャー入ります!」
冴島の鋭い声とともに、ストレッチャーに乗せられた患者が入ってきた。
「救急隊の到着時には既に心停止、CPR(心肺蘇生法)には反応しません」
ストレッチャーから移された患者に、三井先生が心臓マッサージを施し始めたところに、白石が交代を申し出た。
「変わります」
「お願い。
藍沢、香坂は?」
「熱中症の症状がある女性を処置次第来ると」
あいつのことだ、医師やナースに呼び止められて、指示を飛ばしながらここに向かっているんだろう。
「脳幹の圧敗が強い…」
「だめか」
橘先生の声に、振り返って頷く。
「蘇生に時間がかかりすぎました」
モニターのグラフは、一直線を描き続ける。
「……11時14分、死亡確認」
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(白石)
「まだ若いしPCPSはどうかな」
「1度もアドレナリンに反応してません」
私の考えは冴島さんの言葉で打ち砕かれた。
「…瞳孔どうですか」
「…散大してる。
白石、残念だけど諦めましょう」
────そんな…。
「そっちも駄目か」
橘先生の声に、救命の空気がどんどん悪くなっていく。
悔しい。
くやしい。
ぱたぱたと小さな足音が慌ただしく聞こえ、入口の方を見ると、肩で息をしながらその場に立ちすくむAと、後ろからは緋山先生と藤川先生、灰谷くんの姿が見えた。
「A」
「……ひやませんせ、私…」
────────間に合わなかった。
「両方か…」
藤川先生の言葉に、Aがくしゃっと顔をゆがめた。
あの小さな手を白くなるほどぎゅっと握りしめて、藍沢先生たちが診ていた患者さんにそっと近づく。
透明な手袋に包まれた白い手が、するりと血まみれの傷口を滑った。
「………皮下埋没縫合、行います。
針と糸、お願いしてもいいですか」
震える声が、その背中が、いつもより頼りなく見えた。
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恵李 - こんにちは。恵李です。1年前からほとんど毎日見てます!続編よろしくお願いします!あの〜質問questionなんですけど、何歳ですか?私は華のJK16歳ですけど教えてください!! (2022年10月19日 22時) (レス) @page10 id: 18a46fedc8 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - ayanelさん» こんにちは… (2021年9月10日 11時) (レス) id: 9a04ef101c (このIDを非表示/違反報告)
レー - 質問というか聞いていいですか? (2021年3月8日 22時) (レス) id: 88b0f39677 (このIDを非表示/違反報告)
フラ - 作品を参考にしてよろしいですか?? (2020年9月11日 22時) (レス) id: ead1db5ef4 (このIDを非表示/違反報告)
あゆか(プロフ) - とても作品内容は面白く読ませて頂きました。一言申し上げるとセリフの前に名前を書いていただけると誰のセリフだか分かりやすくてもっと良い作品になると思います。素敵な小説ありがとうございました。 (2019年12月31日 0時) (レス) id: 8f8d498a5d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年7月25日 21時