コード・ブルー -Blue steelyard-

recollections．1 -思い出- ページ7

「あ、あの」



ひと段落ついてブースに戻った時、フェローの横峯さんが恐る恐ると言った様子で声をかけてきた。


後ろには名取くんと灰谷くんもいる。



「さっきの…Aさんって誰なんですか？」



新人かと思ったんだろうが、私たちに敬語を使わない時点で消去。



何よりあの手さばきにぽかんとしていたのが少し可笑しくて。


縫合した後の傷口を、普通なら橘先生や三井先生が確認するところ、それもなしだった。



つまり、それだけ信用があるということ。



「あいつは俺たちの同期────香坂A。

フェロー時代から上も認める実力派でさ。

けど7年前にＬＡの大学病院に臨床医師として3年派遣されて、帰国してからはずーっと各地の有名病院たらい回し」



藤川先生に続いて、緋山先生も嬉しそうに声をあげた。



「全国の病院がAの腕を欲しがってたからねー。

でもあの子、同じ場所に留まるのがあんまり好きじゃないタイプだから、自分から出て行ってたらしいけど」



私も何度か連絡をとっていた。


元気？と送れば元気元気！手術多すぎて眼球落っこちそう！なんて、半分冗談を交えた返事が返ってきたっけ。



「あれ？さっき時差ボケって言ってなかった？」




「────実は、2年前からノルウェーの病院に臨時で飛ばされててね、今朝帰ってきたとこだよ」

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