壊れかけのスノードーム

約束の夜、言葉を交わして ymmt ページ35

「え、まだ山本さんにおめでとうって伝えれてないの？」
『うっ、私が1番気にしてるんだからそんな事言わないでよー！』



今日は6月1日。そう、私の想い人である山本さんの誕生日。だから本当は日付が変わると同時にメッセージを送りたかったけれど、ただの仕事仲間から日付が変わった瞬間にメッセージが送られてきても迷惑だろう、と考えて後回しにしていた結果がこのザマだ。



『こうちゃんは日付変わってすぐにメッセージ貰ったんだっけ？』
「……は！？なんで知ってんの！？」
『あの子から聞いたの。電話かけたんでしょ？すぐに』
「あーもうやめてやだ」



仲良くしている同期との会話を思い出す。どこかテンションの高かった彼女を居酒屋に連れ出してサシ飲みしながら聞き出していたのだ。


でも正直このふたりはいつくっつくのか、なんて周りに言われていたような2人だから微笑ましい話になるけれど、私と山本さんだとそうはいかない。


……それに、前に山本さん好きな人いるって言ってたんだよなぁ。だったら私からのおめでとうございます、なんて迷惑以外の何でもないだろう。



「ま、山本さんはAからおめでとうって言って貰えたら嬉しいと思うよ？」
『そうかなぁ』
「祝ってもらって嫌になる人なんてそうそう居ないよ」



じゃ、頑張って〜〜〜なんて手をヒラヒラさせて別の所へ行ってしまった。どうしようか、なんて考えていた時にドアの方からきこえたガチャ、という音。慌ててドアの方を向けばそこには今日の主役である山本さんの姿が。


その瞬間に聞こえ始めるおめでとうの声。あ、そっか。この輪に混じっていたらいいのか。



『おめでとうございます』



なんて周りの輪に溶け込んで呟いた言葉。山本さんに届いたのかは分からないけれど、お祝いできたということにほっとしてこちらに近づいてきている人影に気が付かなかった。



「ねぇ、Aさん」
『あ、はい！』



顔を上げるとそこに居たのは山本さんで。え、なんて言葉を落とす前に、



「今日、一緒にご飯食べに行かない？やっぱり誕生日は好きな子にお祝いして欲しいからね」



なんて告げられたのだから今の私の顔は真っ赤に色づいているだろう。





＊

山本さんお誕生日おめでとうございます！
実は過去のお話とリンクしてたりします。気がついた方はぜひ教えてください。

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