壊れかけのスノードーム

☆酔いのグラスと告白　kwkm ページ21

『川上！聞いてよ！！！』


なんて少し怒っているような顔で俺の家にズカズカと上がり込んできたのはA。彼氏持ちがほかの男の家に一人で来ていいものなのか。


｢彼氏持ちが簡単に他の男の家に来んな｣

『別れた！』

｢…は？｣

『浮気してたしその上やっぱり付き合うなら年下がいいとかほざきやがったんだけど！！』

｢あぁ、そう…｣


え、何こいつ振られてその足でここまで来たわけ？普通一人になりたいだとか女友達に慰めてもらうとかじゃないの？

でもAがめそめそしてる姿なんて想像もつかないしこっちの方がよっぽどAらしい。


｢まぁ浮気するような奴よりいい人はいるって。｣


例えば俺とか。そんなこと口が裂けても言えないが。

ずっと、ずっと好きだった。Aに彼氏が出来て幸せそうにしている様子をみて素直に手を引いた。…けど、そんな男なんかより俺の方が確実にAを幸せにできる、なんて柄にもないことを思ってしまった。


『もう今日はやけ酒するから。川上付き合ってね』

｢はいはい｣



『ねぇかわかみ〜〜〜。慰めてよぉ』


忘れていた、Aは酔ったらすごくめんどくさいタイプなのだった。今も酔っ払い特有のなんだかふにゃふにゃとしたようにような声で名前を呼ばれる。


｢はいはい、…まぁ今日ぐらいだったら話全部聞いてやるよ｣

『かーかみは優しいねぇ。…川上が彼氏だったら良かったのにね』


なんてぽつりと呟かれた言葉。もう何度その場所を願ったかなんて覚えていない。気がついた時にはもう引き返せないところまで来ていた。


｢じゃあ俺にすればいいじゃん｣

『え…？』

｢ずっと、お前に彼氏がおっても、ずっと好きやった｣

｢俺なら絶対に悲しい思いなんてさせんから、俺を選んで｣


そこまで言ってから我に返った。彼氏に振られて直ぐに告白するなんてデリカシーのでの字もないし、酔ってる時にする告白なんて男として最悪だ。

俺たち二人の間に少し重い沈黙が流れる。何分経ったか、何秒だったかも分からない沈黙を破ったのはAだった。


『…酔ってる時の告白なんてやだ』

｢…ごめん｣

『明日、待ってるから。そしたらちゃんとうんって言うから』


それだけ言って残っていた酒を全部飲み干して俺のベッドにもぐりこんだ。

ベッドからはAの赤い耳だけが覗いていた。



＊

リクエストより。大変遅くなって申し訳ございません…！

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