壊れかけのスノードーム

涙をパレットにのせて　kwmr ページ18

『…っ！』


背中を伝う嫌な汗の感覚で目が覚める。嫌な夢を見ていた気がする。だって目尻に涙が溜まっている感覚がするから。

目が覚めるとそれまで見ていた夢の内容なんて忘れてしまうけど嫌な感じだけは忘れられない。

カーテンに切り取られた向こう側はまだ暗い。おそらく1時や2時といったところだろう。

いつもなら大助かりな一度目が覚めてしまうとなかなか二度寝出来ない体質が今は恨めしい。明日も普通に仕事なのに。これじゃあ明日の仕事中めっちゃ眠くなるじゃん。


｢…A？｣


と隣で寝ていたはずの河村さんが眠そうな目を開けてこっちを見た。


｢どーしたの、寝ないの｣

『ちょっと目が覚めちゃって』


朝と似たような少し間延びして掠れた声に今更キュンとはしないけど、その声が今の私にとってすごく居心地のいいものだった。


｢ちょっと待ってて｣


と告げた彼はベッドからするりと抜けてどこかへ行ってしまった。しばらくして戻ってきた彼の手にはさっきまで持っていなかったカップが二つあった。


｢はい、甘めのホットミルク｣

『ありがとう…』


普段ならこんなことしないのに、私が目を覚ましてしまっても気づかないで寝てるくせに。彼の優しさと甘いホットミルクが今の情緒にはとても染みて一度止まったはずの涙がまた流れてしまう。


｢ほらほら泣かないの｣


なんて言って私の頬に流れる涙を指の腹で優しく拭ってくれるのに安心して余計に止まらなくなってしまう。


『かわむらさんのせいだもん…』

｢はいはい、じゃあ責任もって俺が涙拭ってあげる｣


本当は河村さんに感謝したいのに言えなくて、でもそれも優しく受け止めてくれる。


｢少しは落ち着いた？｣

『うん…』

｢じゃあマグカップ貸して、片付けてくるから｣


と言ってマグカップを片付けた時に一緒に蒸しタオルを持ってきてくれた。


｢明日も仕事なんだから、目元腫れてちゃ嫌でしょ｣


なんて言って私の目元に当ててくれる。


『ありがとう、いっぱい…』

｢いーえ、もう一回寝よっか｣

『うん』


寝る時は私のことぎゅってしながら寝てよ、そしたらもう泣かずに寝られると思うからさ。





マグカップいっぱいの愛

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