青春をガラス瓶に詰めたなら

愛の代わりに哀を伝えよう　secret ページ46

俺、好きな人が出来たんだ。

お願いだからそんなにキラキラした目で伝えてこないで──





私には幼い頃から一緒にいる男の子がいる。今はもう男の子、なんて年齢じゃないけど。

幼い頃からずっと隣にいてお互いの恋愛遍歴なんて知り尽くしている。

お互いに好きな人が出来たら当たり前に報告して相談して、なんなら協力までしちゃったり。

そんな関係は小学校の時だけじゃなくて高校、大学、果ては現在社会人になっても続いている。


『今度は誰なの？』

｢え〜、恥ずかしいなぁ｣

『どうせ最終的には話すんだから』


なんてなんでもないことかのように話している。

正直私はこの時間が嫌いだ。この話をしている時はいつもよりもキラキラした目をして話す。

ねぇ、そのキラキラした目は誰に向けているの、私には向けてくれないの。



隣にいすぎて分からなかった気持ち、本当の想い。

大切なものほど失ってから気づく、なんて嫌という程に学んできたはずなのに結局失いかけてから気がついている。



『ねぇ、』

｢ん？｣

『…いや、なんでもない』


結局私は弱虫で、臆病で、この関係に甘んじて。甘んじたからこんな結末になっているのに、それでもまだこの関係に甘んじることをやめない。


｢Aは？俺の話ばっかじゃ悪いし｣

『今は、…失恋してる途中だから』

｢え、俺何も聞いてないんだけど｣

『話さなかったし』


本人に本人に対する恋愛相談なんて出来るわけない。漫画の世界ではそんなテクニックで相手を意識させる、なんてシチュエーションもあるけど。ずっと一緒にいたからこそそんなこと出来やしない。


｢ふーん、…言ってよ。俺とお前の仲じゃん｣

『言ったところでどうにもならなかったし』


だって貴方は私にその目を向けてくれないじゃん。私と踏み込んだ関係になるのが嫌で一線ひいてるの、知ってるよ。

だからひねくれてる私は愛の代わりに哀を伝えてあげる。


『ねぇ、私好きだったよ』

｢…なにがよ｣

『…さぁね』


ほら、わざと分からないふりなんてする。私にはこの結末が相応しい。だから絶対に愛なんて伝えてやんない。

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