青春をガラス瓶に詰めたなら

葉を千枚重ねて ko-chan ページ15

｢こんにちは〜｣

とオフィスに入っていくと、いつもは皆返事を返してくれるのに今日は返事が一向に返ってこない。

不思議に思っているとその原因はすぐに分かった。オフィスがざわざわしすぎて誰も俺が来たことに気がついていないのだ。

それも悲しいので少しざわざわしている中心部に近づいて行く。

皆何に対してそんなにざわざわしてるんだ？その中には今日来ているメンバー全員が集まっておりさらに何やらいい匂いもする。

｢あ、こうちゃん｣

｢山本さん、これは？｣

『Aちゃんからの差し入れだよ〜』

手作りだってー、と山本さんの声が続くが俺はそれどころではなかった。

そりゃ男として好きな子からの差し入れだなんて嬉しくないわけがない。

AAちゃん。伊沢さん直々の推薦で入ったライターで彼女の書く記事は評判もとても良い。クイズノック内では記事だけではなく彼女の優しさや気遣いなども相まってすごく好かれている存在だ。

まあ案の定俺は彼女の優しさなどに惹かれたのだが。

｢あ、こうちゃん。人によって少し中身違うらしくて、それぞれの机にAちゃんが置いていったからこうちゃんの机にも置いてあると思うよ〜｣

まぁ僕含め皆クッキーだったから違う人なんて本当にいるのかなぁ、と呟いた彼の顔はなんだか少しニヤニヤしていた気がした。



机を見てみると綺麗なでも少し女の子らしさのある字で

『お疲れ様です。皆さんに差し入れを作ってきたのですが、傷んでしまうと大変なのでオフィスの冷蔵庫に入れておきました。よければ食べて下さいね。 A』

と書かれた付箋が貼り付けられていた。

本当は今すぐにでも冷蔵庫から取り出して食べたいところだが生憎お昼を遅めに食べたのでお腹がいっぱいなのだ。

仕方がないので記事を仕上げて家に持ち帰り家で食べることにした。



記事を仕上げて冷蔵庫から有難く差し入れを貰い家に帰った。

軽く夕食を食べ彼女からの差し入れを食べようと差し入れの包装を丁寧に剥がした。

その包装の中には綺麗なミルフィーユが鎮座していた。

その時俺の頭に山本さんとの会話が蘇ってきた。



"人によって中身が少し違うらしいよ"

"僕含め皆クッキーだった"



でも俺の差し入れはミルフィーユだった。これは少し期待しても良いということなのだろうか。









────葉を千枚重ねて ミルフィーユ

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