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「いや、言うほど女癖は悪くはないかもな」
 ふと暁は呟く。何時ものように生意気で、気怠げで、陰を孕んだ軽薄な声色。
「男も怪異も居るから女の子は5人だけだ」
…それで十分過ぎるくらいよ。
「あたしの他の四人の女の子達ね…見てみたいわ」
「?お前は怪異カウントだ、紫陽」
 は?そんな訳…
 なのに、当たり前のことを質問されたかのように暁は首を傾げる。
「妖怪変化と言うには充分に妖しいし、怪しいし、変わってるし、化物だろう?存在として不自然だ」
だからこそ、魍魎は魍魎足り得る、と暁は付け足した。化物も失礼だけど、
「あたしは存在として異ならないわ」
「んな訳ねえだろ?」
「そうであったとあたしが認識しているから」
「は?俺の尊敬する紫陽ねぇは、そう『であったような』ものとそう『である』ものの見分けがつかないのか?ざーこざーこ」
 暁は見下すように嘲笑う。
 集団認識、胎児の夢、エントロピーの増大により咄は譚として拡散していき、やがてもともとそうであったように『成る』。私達バンパイアのような感染性の疫病は、特にその傾向が強い…って、何度も教えてあげたのに。
 それに…煽るの下手だなぁ暁。弱々しい反抗は、より強い支配の引き金となる…ってことも、忘れちゃったの?
「暁くんのざぁ〜っこ♡実在しないこの世界は認識により構築されるのに♡」
 歳上のメスガキ構文キッツ…とでも言いたげに私に向けた白い目をふっと背けると、彼はタクシーに気づいて立ち上がった。煙草を地面に捨て、靴で踏みつけて消火。治安悪いなぁ…と眺めていると、運転手へ好青年の様な応対をしていた…彼も、もう立派に仕事していたんだったか。
「俺は存在しないものは存在しないものと定義する」

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作者名:みかなべ | 作成日時:2024年3月21日 18時

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