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教師の声が耳を素通りする。
古語辞典をめくる指が震える。
最後に生理がきたのはいつだっけ。
違う。急に痩せたからそのせいだ。遅れているだけだ。
そうだ。そうに決まっている。
異様な眠気も、下がらない微熱も、倦怠感も。
急激なストレスに少しばかり体が驚いてしまっている、ただそれだけのはず。
シャーペンを握り直した。
けれど、もしもそうだったら。
ショックのためにあの時の記憶は曖昧だった。
そういう事態が起きないための配慮があったかどうかなんて覚えていない。
血の気が引いた。
うまく握れなくなったペンが手から零れ落ちる。
フルーツサンドの匂いが漂ってきた気がして。
授業が終わった瞬間、トイレに駆け込んだ。
急用ができた旨をメールすると、北斗くんの部活が終わるのを待たず学校を出た。
一旦施設へ戻り、私服に着替えてから電車に乗る。
なるべく遠くへ。学校や施設の知り合いと会いそうにない駅で降りる。
薬局で買った検査薬を鞄に隠し、駅のトイレへと入った。
使用済みのそれにくっきりと浮かぶ、一本の線。
その場に立ち尽くした。
自分が母親になるのは、結婚しているとか好きな相手だとか、そういう愛する人の子供を身籠る時だと思っていた。
あんな形の末の誰にも望まれない子を宿すなんて、そんなの頭の片隅にもなかった。
そもそもどれの子供かだって分からない。
確かに物理的には有り得る事態だとしても。
でも、こんな惨い出来事が本当に現実なのだろうか。
夢見がちな私は、行為としてのそれとは別物として、２人の間の愛みたいなものに惹かれて赤ちゃんはやって来るのだとどこかで信じていたのだ。
その論理からすれば、あの時の出来事で子供などできるはずがない。
私に何か非があったのかもしれなかった。
私がふしだらだったから？
神様は私も知らない私の不品行を見透かしていたのか。
だからこんなことが起きてしまったのだろうか。
だったら、私は一体なんの罪を犯したというのだろう。
箱に入っていたもう１本を使っても結果は変わらなかった。
２本まとめてサニタリーボックスに投げ捨てる。
すべて悪い夢を見ているようで。
涙の一滴さえも流れなかった。
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真澄(プロフ) - 爽さん» ありがとうございます！早く明るい話に持って行けるように頑張りますね！ (2021年10月20日 21時) (
レス) id: aa6f36c2c4 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - 更新ありがとうございます！次も気になって仕方ないです (2021年10月12日 22時) (レス) @page37 id: 3c9be1cb24 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» 伏線はすごく頑張って敷いているので嬉しいです。本当に救ってあげて欲しいですね( ；∀；) (2021年10月1日 23時) (レス) id: c611a69c7e (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 改めて最初から読み返すと色々な伏線があって、すごく納得しました。切ない苦しい思いを抱える主人公を、大我さん救ってあげて、、！という気持ちで続きを待っています。 (2021年9月29日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 浬さん» 恐縮です！ありがとうございます😂 (2021年9月24日 23時) (レス) id: c611a69c7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年8月17日 11時
