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息苦しさに気付いた瞬間、夢が途切れた。
空気を吸うことも吐くこともできない。
ゆっくりと目を開けば、暗闇の中、１人の女がいた。
がらんどうの、虚ろな瞳。
月明かりを受け、妖しく光っている。
姉ちゃんによく似ているけれど、姉ちゃんとは別人だと一瞬だけ思った。
目は落ち窪み、頬はこけて。
何より、あの優しい姉ちゃんが僕の首を絞めている光景が信じ難かったのだ。
「姉ちゃん」と呼んだ言葉は、喉の奥で掻き消される。
溜まった熱感に、粘膜が焼けるような感覚を覚えた。
声が出ない。
両手がさらに喉首に食い込んだ。
殺される。
姉ちゃんに殺される。
やはり僕のせいだったのか。
姉ちゃんの“病気”の原因。
もしかしたら両親のそれだって。
掠れた、感情を失った声が、不思議と鮮明に耳まで届いた。
「駿ちゃん、一緒に死のうか」
震えるその手首に触れた。
はっとした姉ちゃんがわずかに力を緩める。
「……姉ちゃん、あのな。聞いてほしいことあんねん」
僕は何かを言ったのだ。
姉ちゃんに、どうしても伝えたいことがあった。
けれど、その“何か”を思い出せない。
大切なことなのに、どうやったって思い出せないのだ。
気付けば、姉ちゃんが僕を抱きしめて泣いていた。
ごめんね、と繰り返しながら、子供のように泣きじゃくっていた。
姉ちゃんが僕を育て上げることに執着し始めたのは、その日からだった。
.
忘れようと思った。
僕は何も知らない子どもだったから。
姉ちゃんは優しい。いつだって誰よりも僕を大事にしてくれる。
だったら、それでいいじゃないか。
あの夜の姉ちゃんは姉ちゃんではなかったのだと、そう思うことに決めた。
けれど、あの時の姉ちゃんと同じ17歳になった頃だろうか。
世の中のことが、様々なことが、分かり始めた頃。
ふと浮かんだ疑念があった。
もしかしてそういうことではないか、と。
そんなはずはない、そんなことあってはならないと否定して。
なのに否定すればするほど、辻褄の合う記憶ばかりが蘇る。
分かりたくなかった。姉ちゃんだって察して欲しくなどないはずだ。
でも、分かってしまった。
大人になるというのは、そういうことなのかもしれない。
疑念が確信に変わったのは、医学部に入ってからのことだった。
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真澄(プロフ) - 爽さん» ありがとうございます！早く明るい話に持って行けるように頑張りますね！ (2021年10月20日 21時) (
レス) id: aa6f36c2c4 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - 更新ありがとうございます！次も気になって仕方ないです (2021年10月12日 22時) (レス) @page37 id: 3c9be1cb24 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» 伏線はすごく頑張って敷いているので嬉しいです。本当に救ってあげて欲しいですね( ；∀；) (2021年10月1日 23時) (レス) id: c611a69c7e (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 改めて最初から読み返すと色々な伏線があって、すごく納得しました。切ない苦しい思いを抱える主人公を、大我さん救ってあげて、、！という気持ちで続きを待っています。 (2021年9月29日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 浬さん» 恐縮です！ありがとうございます😂 (2021年9月24日 23時) (レス) id: c611a69c7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年8月17日 11時
