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エレベーターを降りて右へ進む。
奥側に乗っていた橋本さんが、「ねぇ」と不可解な面持ちで声を上げた。「大我の部屋、来たことあんの？」
しまった。スムーズすぎた。
「……初出社の日にお迎えに来たので」
「なぁんだ」
「んじゃ、よろしく」
扉の前に私を立たせると、自身は廊下の柱の陰に隠れる。
溜息を吐き、インターホンを押した。
しばらくのち、「はい」と若干眠そうな声が返ってくる。
「えっと……、夜分にすみません」
「……は？」
声が近付いて聞こえる。インターホンのカメラを覗き込んでいるのだろう。
「道枝です……本当にごめんなさい、こんな遅くに」
大我さんは、「えっ、なんでAが、……えぇっ！？」と困惑しつつドアを開く。お風呂上がりなのか毛先が濡れていた。
その瞬間、「どうもこんばんはー！」と柱から飛び出した橋本さんが前に立ちはだかる。
悲鳴を上げ、大我さんは内側に飛びのいた。
「階まちがえてるぞ！」
構わず玄関に入ろうとした橋本さんのジャケットの襟を、大我さんが捕まえる。「お前の家はひとつ下！」
「間違えてないんだな〜これが。せっかくの土曜夜だし飲み明かそうよ、Aちゃんと３人で」
きょろきょろと２人を見比べる私に、橋本さんが言った。「俺の部屋、ちょうどこの真下なの。ひとつ屋根の下で快適タワマン生活」
どうりで。謎が解けた。
「どこが快適なんだよ。これ以上迷惑かけたら水漏れさせるぞ」
俺がこのマンション勧めてあげたのにひどーい、と橋本さんは靴を脱ぎ始めている。
「待て。お前、うちの出禁まだ解けてないから」
先日大我さんの部屋で泥酔し、シャンパングラスを破壊した前科があるらしい。
「大人になってもさぁ、人恋しい夜はあるじゃん？」
「ならいつものあの子のとこ行けよ。幼馴染のミズキちゃん」
彼女なのかな。
「あーだめだめ。瑞稀の漫画にジュース零して、今月いっぱい出禁だから」
「出禁になりすぎじゃね」
ちなみに、と橋本さんが私を振り返った。「俺の下はさくちゃん家ね」
「そうだったんですか？」
作間くんが大我さんを見かけたと言っていたのは、自宅マンションでの話だったらしい。彼が言う、橋本さんとの「不本意な共通点」というのもこのことだろう。
イケメン御用達マンションか。
「たまにわざと床に物落としたりしてる。いたずら〜」
「大人げないですね」
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爽 - 続編消えたと思って焦りましたw続き読んだらドキドキし過ぎて一瞬で持ってかれました。 (2021年7月26日 14時) (
レス) id: 69f8ee2e96 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» だいぶ大人なお話になってきましたが、今後ともよろしくお願いします！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - キャンディタフトとは違った少し大人なこの作品も好きだなって思いながら毎回楽しみなです。 (2021年7月14日 14時) (レス) id: 9c49d7f5d5 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» コメントありがとうございます。16章は２人の距離がすごく縮まっていくのでぜひ読んで頂きたいです！ (2021年7月3日 8時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 二人の距離がもどかしくてすごく続きが気になります笑 (2021年6月30日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年5月21日 14時
