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ダイヤモンドが散りばめられた、薄いピンクの腕時計。
秘書になったばかりの頃、大我さんから贈られたものだ。
でもこれは違う。あくまで詫びの品として。
だってあの人も、私を泣かせた罪悪感による自己満足だと言っていた。
「レディースの腕時計を購入したいと大我さんからお呼びが掛かった時は、やっとこの日が来たって部署中が大騒ぎでした」
腕時計を持って来たあの朝、�盒兇気鵑�やたらと笑顔だった理由が今になり判明した。
「これはいろいろと事情があって……。だいたい、私はただの秘書ですし」
だからやんけっ！と廉先輩がじれったそうな声を上げる。「ただの秘書に、こんな物は贈らへん」
「でも」
「金が有り余ってようが、世間知らずだろうが、絶対に贈らん。だって秘書やもん」
そんなことを言ったって、私は確かに大我さんから高級腕時計を受け取っている。これが現実なのだ。
それがおかしな事態なのならば、なぜあの人はそんなことをしたのか。
「期待されてもいいと思ったからじゃないですか？ あなたになら」
�盒兇気鵑�言った。「つまりは、勘違いじゃないってことでしょう」
勘違いではない、とは。
「坊ちゃん、高価な物を贈りたい相手はどんな女性だって言ったんやっけ？」
こちらを見下ろす２人の視線は、心底楽しそうなものだった。
腕を伸ばし、取り皿を近くのテーブルに置いた。
10年も昔の高校生のたわいない一言に、あそこまで大騒ぎできるあの２人が羨ましかった。
きっと愉快な職場なのだろう。
けれど、そうなのだ。
お金持ちだろうが、泣かせた罪悪感があろうが、秘書に百万円近くもする腕時計など普通は贈らない。
よく考えれば不可解な話だった。
聞いてみるか、本人に。
いや、そんなことできるはずない。
それを聞いてしまったら、私たちは今のままじゃいられないような予感がしていた。なんとなく。
仕事中は適当にあの人の機嫌を取って、たまに叱って。
１日が終わったら、ぼんやりと心地よい15分を過ごす。
それでよかった。
大我さんに特別な女性ができるのが先か、私の男性恐怖症が治るのが先か、それは分からないけれど。
その日が来るまでは、こうした穏やかな毎日を続けるのが最も望ましい道だと私は信じていた。
「いぇーい。Aちゃん飲んでる？」
頭上から明るい声が降ってきた。
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爽 - 続編消えたと思って焦りましたw続き読んだらドキドキし過ぎて一瞬で持ってかれました。 (2021年7月26日 14時) (
レス) id: 69f8ee2e96 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» だいぶ大人なお話になってきましたが、今後ともよろしくお願いします！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - キャンディタフトとは違った少し大人なこの作品も好きだなって思いながら毎回楽しみなです。 (2021年7月14日 14時) (レス) id: 9c49d7f5d5 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» コメントありがとうございます。16章は２人の距離がすごく縮まっていくのでぜひ読んで頂きたいです！ (2021年7月3日 8時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 二人の距離がもどかしくてすごく続きが気になります笑 (2021年6月30日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年5月21日 14時
