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「大我さん、最近私が社内でなんて呼ばれてるか知ってますか？」
反抗されるのを覚悟で、はっきり注意することにした。
初めは嫌々押し付けられた秘書の仕事だが、だんだんと私も使命感みたいなものに燃えてきている。
「そうだなー、美人秘書とか？」
良いことを言ってやっただろうとばかりのドヤ顔に、勢いが若干削がれた。
「……幼稚園の先生、です」
「え？」
「あなたが幼稚園児で、私が先生。いいんですか、部下にこんなこと言われてて」
大我さんは腕を組んだ。「確かにAって小うるさ……いや、しっかり者だから先生とかも向いてそう。言い得て妙だな」感心している場合か。
「仕事に行き詰まる度に社長が脱走する会社なんて、聞いたことありません」
「その頃になればやめるよ、そりゃ」
「今すぐやめてください」
私は溜息をついた。「あなたには立派な社長になってもらいたいんです」
「どしたの急に」
叱られているのにニヤつき始めたこの人がやはり分からない。
「そんなこと言われたら照れるな」
「当たり前です、私はあなたの秘書なので。大我さんにお父様以上のトップになって頂くのが仕事ですから」
なんだそれかよ、と今度はなぜか不貞腐れていた。
「とりあえず、脱走以外の発散方法を見つけましょう。私もできる限りのお手伝いはしますから」
その瞬間、彼の瞳が光ったように見えた。「できる限り手伝うって言った？」
「……え、まぁ」
嫌な予感がする。
「本当の本当に言ったな？」
その発散方法というのがこれだった。
仕事終わりに毎日15分間、大我さんの話もとい愚痴を聞く。
そんなことかと拍子抜けしたのだけれど、始めてみると想像とは大幅に異なった。
彼の左手は私の腰に回され、右手は私の肩または頭。
その体勢で話を聞けと言う。
つまりは寝ているか座っているかの違いだけであって、大阪での夜とほぼ同じ状況なのである。
当然、初めは抵抗した。
触り方がいかがわしいわけでもないし際どい所に触れられることもなく言うなればペットを愛でる動作と変わらないのだが、そんなのどうでもよくてこの体勢自体が間違いなく大問題だ。
会社でこんな不埒を働いている現場を押さえられたら、私は少なくとも秘書課からは異動させられる。下手したらクビだ。
秘書に手を出す危機管理能力のないバカ息子として、大我さんの輝かしい経歴にだって傷が付くだろう。
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爽 - 続編消えたと思って焦りましたw続き読んだらドキドキし過ぎて一瞬で持ってかれました。 (2021年7月26日 14時) (
レス) id: 69f8ee2e96 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» だいぶ大人なお話になってきましたが、今後ともよろしくお願いします！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - キャンディタフトとは違った少し大人なこの作品も好きだなって思いながら毎回楽しみなです。 (2021年7月14日 14時) (レス) id: 9c49d7f5d5 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» コメントありがとうございます。16章は２人の距離がすごく縮まっていくのでぜひ読んで頂きたいです！ (2021年7月3日 8時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 二人の距離がもどかしくてすごく続きが気になります笑 (2021年6月30日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年5月21日 14時
