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北斗くんは新大阪まで私を見送ってくれた。
今日の仕事はもう終わっていたのかと思っていたが、これからまた研究所に戻るらしい。「ずっと憧れてた仕事だから苦じゃないよ」と笑っていた。
電車に乗っている間も、新幹線の乗換口に向かっている間も、私はずっと落ち着かなかった。
言わなければ、北斗くんに。
あの時のことをきちんと謝らなければいけない。
ちょうど良い時間だね、と改札口の電光掲示板を見上げる彼に声を掛けた。「北斗くん」
「うん？」
「あの……ごめんね」
振り向いた彼に小さな声で告げた。「あの時、……高２の冬、私すごく変なこと言っちゃったから。ずっと謝りたいって思ってた」
北斗くんはじっと私を見つめる。
それからちょっと赤い顔になって、手で口を押さえた。
「……こっちこそごめん。俺、ガキだったからさ。あの時はあれがかっこいいと思ってたんだよ、若気の至りだな」
顔をぱたぱた扇ぎながら照れたように笑っている。「てか、女の子の方からあんなこと言わせるってやばいよね。俺もあれからそれなりにいろいろ経験したから、今となっては振られた理由も分かるっていうか」
私は俯いたままかぶりを振った。
違うの、北斗くん。
あなたは分かってない。
一生、何も知らなくていいの。
彼は名刺を取り出すと、裏に素早く何かを書き留める。ラインのIDだった。
「たまに東京にも出張行くんだ。もし気が向いたら連絡して？」
差し出された名刺を受け取り、黙って頷いた。
「本当はホームまで見送りに行きたいんだけど」
「いいよいいよ、すぐお仕事に戻って？」
今日は遠慮しとこうかな、と彼は改札の奥に目をやって苦笑した。
ホーム階行きのエスカレーターに、グレーのスーツを着た後ろ姿が見える。
「東京まで気を付けて帰ってね」
「ありがとう。お茶とケーキ、ごちそうさまでした」
「会えて良かった」
元気でね、と北斗くんは手を振った。
改札を抜け、彼に向かってもう一度「ありがとう」と唇で伝える。
またね、と返してくれる北斗くんに頷くと、私は急いでグレーの背中を追った。
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爽 - 続編消えたと思って焦りましたw続き読んだらドキドキし過ぎて一瞬で持ってかれました。 (2021年7月26日 14時) (
レス) id: 69f8ee2e96 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» だいぶ大人なお話になってきましたが、今後ともよろしくお願いします！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - キャンディタフトとは違った少し大人なこの作品も好きだなって思いながら毎回楽しみなです。 (2021年7月14日 14時) (レス) id: 9c49d7f5d5 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» コメントありがとうございます。16章は２人の距離がすごく縮まっていくのでぜひ読んで頂きたいです！ (2021年7月3日 8時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 二人の距離がもどかしくてすごく続きが気になります笑 (2021年6月30日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年5月21日 14時
