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どきりとした。
恐る恐る振り向くと、手の甲で目を擦りながら駿佑が欠伸をしている。
今しがた目が覚めた様子だった。ほっと胸を撫で下ろす。
弟は「なんかあった？」と問うてくる。
努めて普段通りの声を心掛け、なんで？と尋ね返した。
駿佑は手を止め、私の顔を覗き込む。
そして静かに囁いた。
「姉ちゃん、知らん女の人みたいな顔してる」
冷や水を浴びせられたような気がした。
当時９歳だった駿佑が、男女の間のそういった機微を理解していたとは到底思えない。
悪意のある言い方でもなかった。
けれど彼は彼なりに、いつもと異なる姉の雰囲気を嗅ぎ取ったのだろう。
私の心の奥の奥を覗き込むみたいなその目つきに、ぞっとした。
私は、賢いこの弟が怖かった。
この子には、私しかいない。
けれど私には北斗くんがいる。
弟と北斗くん。
どちらが大切かなんて選べなかった。
そして、選べないことそれ自体が愚かしいことなのではないかと思ったのだ。
貰ったジュースを駿佑とではなく北斗くんと飲む選択をしたあの時から、私の中で絶対的な１番の存在が弟ではなくなっていたことに気付いた。
私には、何を犠牲にしてでも守らねばならない存在がある。
そんな私が、普通の女の子としての幸せを手に入れることって許されるのだろうか。
そのうち、大きな罰を受けることになるのではないか。
「ほくとくん、また動物園つれてってくれるかな？」
駿佑は自分が問い掛けたことはもう忘れたみたいに、楽しそうな調子で言った。
「……そうね、また行こうね」
暗い予感を頭の中で必死に打ち消しながら、私は微笑んだ。
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爽 - 続編消えたと思って焦りましたw続き読んだらドキドキし過ぎて一瞬で持ってかれました。 (2021年7月26日 14時) (
レス) id: 69f8ee2e96 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» だいぶ大人なお話になってきましたが、今後ともよろしくお願いします！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - キャンディタフトとは違った少し大人なこの作品も好きだなって思いながら毎回楽しみなです。 (2021年7月14日 14時) (レス) id: 9c49d7f5d5 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» コメントありがとうございます。16章は２人の距離がすごく縮まっていくのでぜひ読んで頂きたいです！ (2021年7月3日 8時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 二人の距離がもどかしくてすごく続きが気になります笑 (2021年6月30日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年5月21日 14時
