. ページ24
.
北斗くんの部活が終わるのを図書室で待って一緒に帰る。
休みの日は映画を観に行ったり、カフェで一緒に勉強したりする。
両親を亡くしてから、施設で暮らすようになってからというもの、普通の女の子として過ごすこういった日常をどこかで諦めていた。
だから余計に嬉しかった。
彼にはよく弟の話をした。
小１から満点以外のテスト用紙を持ち帰ったことがない話だとか。街を歩くとしょっちゅう芸能事務所からスカウトされる話だとか。
まぁ、ぶっちゃけ姉バカである。
北斗くんは大して面白くもないであろうそんな自慢話を、いつも楽しそうににこにこ聞いてくれた。
何か月か経った頃、北斗くんが言った。
駿佑くんに会ってみたい、と。
「……俺くらいの年の男って、小学生からしたら嫌かな？」
微妙な表情をしている私の反応が予想外だったみたいで、彼は不安そうに尋ねる。
「そんなことはないと思うけど、北斗くんが嫌やない？」
「俺は兄貴しかいないから、弟欲しかったんだよね」
そう言って彼はいつもみたいに優しく笑った。
北斗くんが私の後ろを覗く。
私の腰にしがみついた駿佑は、慌てたように顔を引っ込めた。
「ほら駿ちゃん、会えるの楽しみにしとったのにどないしたん？」
だってぇ、と私の背中にぐりぐり額を押し付けている。
「あんなにお兄ちゃんが欲しい欲しい言うてたのに、いざとなると人見知りなんやから」
北斗くんは私の背中側に回り、しゃがみ込んだ。「初めまして」
はははじめまして、と駿佑は蚊の鳴くような声で答えた。頬が赤い。
「俺、ほくと。一緒に遊んでくれる？」北斗くんが手を差し出した。
「……うん」
駿佑は体をくねくねさせながらその手を取る。
こら弟、私の北斗くんにしなを作るな。
「ほくとくんはなんの動物が好きなん？」
動物園の入場ゲートをくぐる頃には、駿佑はすっかり北斗くんに懐いていた。
姉そっちのけでマシンガントークを浴びせている。
「んー、犬かな」
「犬なんて動物園におらんで」
「確かに。じゃあ鳥が好きだな」
駿佑は北斗くんの手を引き、気まぐれに獣舎をふらふら巡った。
北斗くんは駿佑が興味を持った動物それぞれについて、分かりやすくその生態を解説してくれる。
動物に詳しいなんて初耳だったけれど、後々聞いたところによると駿佑のために図書室の動物図鑑で予習をしてくれていたらしい。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1158人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HiHiJets」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
爽 - 続編消えたと思って焦りましたw続き読んだらドキドキし過ぎて一瞬で持ってかれました。 (2021年7月26日 14時) (
レス) id: 69f8ee2e96 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» だいぶ大人なお話になってきましたが、今後ともよろしくお願いします！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - キャンディタフトとは違った少し大人なこの作品も好きだなって思いながら毎回楽しみなです。 (2021年7月14日 14時) (レス) id: 9c49d7f5d5 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» コメントありがとうございます。16章は２人の距離がすごく縮まっていくのでぜひ読んで頂きたいです！ (2021年7月3日 8時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 二人の距離がもどかしくてすごく続きが気になります笑 (2021年6月30日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年5月21日 14時
