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ページをめくりつつ、その少年を横目で盗み見る。
今まで私の周りにはいなかったタイプの男の子だと思った。
他の生徒と同じ黒い学生服を着ているのに、どこかしら洗練されている。
高い鼻のせいだろうか。綺麗な黒髪のせいだろうか。
落ち着いた雰囲気によるものかもしれない。
廉先輩だって見た目だけなら洗練されているけれど、中身があんなだしな。
「言葉か」
はからずも口にしていた。
え、と松村くんがこちらを向く。
「なんで標準語なん？」
「……転勤族だから。高校入るタイミングで静岡から引っ越してきたんだよ」
だから関西の男の子みたいに面白い事言えなくてごめんね、とちっとも申し訳なくなさそうな調子で言って彼はページをめくった。見透かされている。
私も再び文字を追い始めた。
私は活字ホリックの気があるから、どんな内容であろうとだいたいの本は読み出したら止まらなくなって時間が経つのも忘れてしまう。
でもその日は、なぜか全然集中できなかった。
文章が意味を持たない文字の羅列に見えてくる。
おなかすいた。廉先輩がくれた白桃オレ飲んじゃおうかな。
でもあれは今夜、渡り廊下で駿佑と飲むって決めたから我慢しよう。
それにしても松村くん、さっきからものすごく集中して読んでいる。そんなに面白い本なのだろうか。
私は少しずつ前屈みになり、表紙を覗き込もうと試みた。
あと少しというところで、松村くんが体を反対側に捻る。
私も横向きに首を伸ばす。
彼が本を顔の高さまで上げる。
私も負けじと椅子から腰を浮かせる。
「……ふっ」
本の向こう側で松村くんが吹き出した。「道枝さんって面白いね」
私たちの間を隔てていた本がなくなり、子犬みたいに無邪気な笑顔が目の前に現れる。
先ほどまでとは別人のような、あどけなさを残す少年らしい笑みだった。
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爽 - 続編消えたと思って焦りましたw続き読んだらドキドキし過ぎて一瞬で持ってかれました。 (2021年7月26日 14時) (
レス) id: 69f8ee2e96 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» だいぶ大人なお話になってきましたが、今後ともよろしくお願いします！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - キャンディタフトとは違った少し大人なこの作品も好きだなって思いながら毎回楽しみなです。 (2021年7月14日 14時) (レス) id: 9c49d7f5d5 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» コメントありがとうございます。16章は２人の距離がすごく縮まっていくのでぜひ読んで頂きたいです！ (2021年7月3日 8時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 二人の距離がもどかしくてすごく続きが気になります笑 (2021年6月30日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年5月21日 14時
