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「おったおった！」
道枝ー！と背後から高めの声に呼び止められる。
廊下をばたばたと駆けてくる音がして、背中にどんっと衝撃を受けた。
私は溜息をつく。「また廉先輩か」
後輩に少し手荒いちょっかいを出すのが生き甲斐らしい１学年上のこの男子生徒は、「俺ですまんねぇ」と私の手を取った。
冷たい紙パックが掌に載せられる。自販機の白桃オレ。
「いやです」
即答した私に出鼻をくじかれた彼が、その場でよろめきながら両手を合わせた。「このとーり！」
「なんであなたの当番をいつも私がせなあかんのですか」
「代わりに道枝の当番は俺がやっとるやん！」
顔の前で両手を擦り合わせている。「デートの約束、忘れとって。頼むわ」
そっぽを向いた私に、先輩は「そんなぁ」と情けない声を上げる。
「自分で飲もうと思って買ったんやけど、しゃーなしやな」
彼は私の反対の手を取ると、名残惜しそうにカフェオレを載せた。
次の瞬間には踵を返し、全速力で昇降口へと走り出す。「大事に飲めや！」
「あっ、ちょっと！」
やられた。
両手に残される２本の紙パック。
肩を落とし、図書室へ向けとぼとぼ歩き出した。
もう１人のカウンター当番はすでに来ていた。椅子に座って静かに本を読んでいる。
図書委員会で何度か見かけたことがある５組の男子だが、名前が分からない。
壁に貼られた当番表を見て思い出した。
松村北斗。
そうだ、星みたいな名前だと思った記憶がある。
「廉先輩は？」
不意に声を掛けられて振り返った。
松村くんが本から視線を上げ、こちらを見ている。「今日の当番、俺と廉先輩だよね」
「……え、えーっとあの、代わってほしいって言われて」
急に話し掛けられたからしどろもどろになってしまい、慌てて誤魔化すみたいに付け足した。「デートなんやって。困っちゃうよね、あの人なんであんなにモテんねやろ？」
松村くんは、「ふーん」と言ってまた本に視線を戻した。
え、それだけ？
「後輩に押し付けるなんて許せん」とか「イケメンやからしゃーなし」とか、何かないの？
彼の横顔をじっと見つめた。
けれどこちらの念は通じない様子で、一向にその顔が持ち上がる気配はない。
仕方なく本棚から適当に１冊取ってきた。
彼の隣へ腰を下ろす。
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爽 - 続編消えたと思って焦りましたw続き読んだらドキドキし過ぎて一瞬で持ってかれました。 (2021年7月26日 14時) (
レス) id: 69f8ee2e96 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» だいぶ大人なお話になってきましたが、今後ともよろしくお願いします！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - キャンディタフトとは違った少し大人なこの作品も好きだなって思いながら毎回楽しみなです。 (2021年7月14日 14時) (レス) id: 9c49d7f5d5 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» コメントありがとうございます。16章は２人の距離がすごく縮まっていくのでぜひ読んで頂きたいです！ (2021年7月3日 8時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 二人の距離がもどかしくてすごく続きが気になります笑 (2021年6月30日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年5月21日 14時
