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「京大、受かってたんだね」
向かいに座った北斗くんが、「え」とコーヒーカップを手にこちらを見た。
「私、全然知らなくて。おめでとう」
10年近く前のことを今さら持ち出すなんて変だろうとは思ったけれど、今になってしか言えなかったのだから仕方ない。
高校時代の彼がそのために一生懸命勉強していたことを私は覚えていた。
「27まで学生して、親の脛齧ってたなんて恥ずかしいけどね」
謙虚なところは変わっていない。
「そんなことないよ。この年で博士号まで取ってて、すごく、尊敬する」
北斗くんはきらきらした瞳を私に向けた。「すごいのはAちゃんの方じゃん、常務秘書って。社長が引退されたらあの人が後を継ぐんでしょ？ そんな人の秘書なんてすごいよ」
「私は偶然に偶然が重なって社長と常務に拾って頂いたようなもので、自分の力じゃないし……」
私は怖かった。
彼に、私も京大志望だったのを指摘されること。
突然に大学受験をやめて、逃げるように上京したこと。
ほとんどの生徒が国公立大学に進む進学校で、私は異色の存在だった。
でも、北斗くんは何も聞かなかった。
彼は昔からそういう優しい人だった。
「駿佑くん元気？」
「うん。もうすぐ21になるよ」
「まじ？ あんなちっちゃかったのに。彼も東京？」
「一緒に住んでる。医学部行ってて」
「すっげー。そっか、頭良かったもんなぁ」北斗くんは懐かしそうな顔をした。
それから、弟と一緒に住んでいるという言葉で思うところがあったのか、一瞬だけ私の左手に目をやる。
その視線に気付いた私と目が合って、彼は少し慌てたように口を開いた。「俺、今でもたまに廉先輩と連絡取ってんだよね」
「うわ、めちゃめちゃ懐かしい」私は紅茶にミルクを入れながら笑った。
「あの人も大学から東京へ出て、確かデパートに就職したんだっけな。結構早い時期に結婚したらしくて」
「意外だね。20代のうちは遊びたいってタイプかと思ってた」
「ね」
意外だった。
自分が思ったよりずっと、普通に話せていること。
大我さんのリハビリの賜物かもしれなかった。
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爽 - 続編消えたと思って焦りましたw続き読んだらドキドキし過ぎて一瞬で持ってかれました。 (2021年7月26日 14時) (
レス) id: 69f8ee2e96 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» だいぶ大人なお話になってきましたが、今後ともよろしくお願いします！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - キャンディタフトとは違った少し大人なこの作品も好きだなって思いながら毎回楽しみなです。 (2021年7月14日 14時) (レス) id: 9c49d7f5d5 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» コメントありがとうございます。16章は２人の距離がすごく縮まっていくのでぜひ読んで頂きたいです！ (2021年7月3日 8時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 二人の距離がもどかしくてすごく続きが気になります笑 (2021年6月30日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年5月21日 14時
