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そうならば、私とも同い年ということだ。
大我さんのように１つの大企業の命運を握る役職に就いている人もいれば、その人のように難しい学位を取って最前線の研究をしている人もいる。
そんな同い年たちがいるのはすごいことだと純粋に思った。
「研究員の間でもこいつはできるって評判なんだって。将来は所長間違いなしって言われてる」
紹介しとくわ、と樹さんが手前の部屋のドアを引く。「北斗いるー？」
その名前に、心臓が跳ねた。
けれど、特段珍しい名前でもない。
「はーい」１人の男の人が奥から返事をした。
「次期社長殿がお見えだからご挨拶しとけ」
今行きます、と答えるその声。
胸が早鐘を打つ。
私と同い年。
確かに薬学部に行きたいと話していた。京大の。
でもまさか、そんなことって。
部屋から出てきた白衣姿の男の人が、大我さんに向かって丁寧に頭を下げた。「初めまして。研究員の松村です」
10年前より背が伸びている。
声が少しだけ低くなっている。
顔立ちだって雰囲気だって、20代の青年のそれに変わっている。
けれど、
黒髪が、高い鼻が、奥二重の爽やかな目元が、
この人が紛れもなく、あの北斗くんだということを伝えていた。
私が生まれて初めて恋をし、初めてお付き合いをした、北斗くんだった。
大我さんと二言三言会話した北斗くんが、ふと大我さんの斜め後ろに目をやる。
咄嗟に大我さんの背中に隠れようとした。
けれどその前に、北斗くんの瞳ははっきりと私の姿を捉える。「……Aちゃん？」
少し遠慮がちに、柔らかく、
私を呼ぶその口跡は何も変わっていなかった。
「Aちゃんだよね」
久しぶり、と北斗くんは私の前に立つ。「元気だった？」
俯いたまま頷くのが精一杯だった。
「え、知り合い？」樹さんが尋ねる。
高校の同級生です、と北斗くんが返した。「びっくりした。同じ会社だったんだね」
まさか。
こんなことって、あっていいのだろうか。
「今は東京の本社にいるの？」
「……うん。秘書、してて」
無意識のうちに私は、助けを求めるように斜め前に立つ大我さんを見上げる。
表情のないその横顔がこちらを振り返ることはなかった。
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爽 - 続編消えたと思って焦りましたw続き読んだらドキドキし過ぎて一瞬で持ってかれました。 (2021年7月26日 14時) (
レス) id: 69f8ee2e96 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» だいぶ大人なお話になってきましたが、今後ともよろしくお願いします！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - キャンディタフトとは違った少し大人なこの作品も好きだなって思いながら毎回楽しみなです。 (2021年7月14日 14時) (レス) id: 9c49d7f5d5 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» コメントありがとうございます。16章は２人の距離がすごく縮まっていくのでぜひ読んで頂きたいです！ (2021年7月3日 8時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 二人の距離がもどかしくてすごく続きが気になります笑 (2021年6月30日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年5月21日 14時
