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彼がゆっくりと首を捻った。
目が合う。
「そうじゃない」
「違うんですか」
「いや、そういうことでもなくて」
「……どっちですか」
大我さんは急に焦ったように、「じゃあもうそれでいいよ！」と大声を出す。
「……もういい。寝る」
壁に向かって寝返りを打とうとしていた。
解かれかけた手を咄嗟に握り返す。
大我さんが寝返りを途中で止めた。
その左腕を引き付ける。
ベッドの真ん中に向けて、少しだけ自分の体を寄せる。
彼が息を呑んで振り向いたのが分かった。
触れるか触れないかくらいにわずかだけ、彼の二の腕に額をくっつける。
どうしてそんなことをしたのか。
そんなことができてしまったのか。
今夜の私は、本当に分からないことだらけだと思った。
大我さんはするすると左腕を上へ動かすと、私の首とマットレスとの隙間に差し込んだ。
右腕は私の腰に回す。
両方の腕で、私の体をきゅっと自身の方へ引き寄せた。
「大丈夫だよ」
包み込まれるみたいに柔らかなボディーソープの香り。
私の背中で、ふわりと彼の手が上下する。
「Aは大丈夫」
彼が私の背中に触れる、その一瞬一瞬。
その度ごとに、長い間私の体を縛っていたものが、ひとつひとつ解けていくような気がした。
不思議な感覚だった。
体から何かが抜けていくのに、お酒を飲んだ時みたいに頭も全身もまどろんで重くなる。
彼の息遣い。
シーツの擦れる音。
体温。
先刻息苦しさを覚えた全ての感覚が、彼の腕の中で感じると心地よいものに変わっていった。
瞼が自然と下りてくる。
「おやすみ」
夢の入口で囁かれたその声は、切なくなるほどに優しかった。
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爽 - 続編消えたと思って焦りましたw続き読んだらドキドキし過ぎて一瞬で持ってかれました。 (2021年7月26日 14時) (
レス) id: 69f8ee2e96 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» だいぶ大人なお話になってきましたが、今後ともよろしくお願いします！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - キャンディタフトとは違った少し大人なこの作品も好きだなって思いながら毎回楽しみなです。 (2021年7月14日 14時) (レス) id: 9c49d7f5d5 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» コメントありがとうございます。16章は２人の距離がすごく縮まっていくのでぜひ読んで頂きたいです！ (2021年7月3日 8時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 二人の距離がもどかしくてすごく続きが気になります笑 (2021年6月30日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年5月21日 14時
