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「そんな、困ります」
「前に一筆書かされたじゃん。手出したら会社中に言い触らされるんでしょ」
今さら転職はきついから何もしないよ、と背中を向けたままぶっきらぼうに言った。
「でも、」
「俺、とにかく眠いんだよね。それどころじゃないの」
おやすみ、と体を丸めるようにして動かなくなる。
呆然として彼を見つめた。
丸まった背はぴくりともしない。
私は大きな溜息をついた。
意を決してカーテンを閉めると、ベッドサイドのランプを点灯させる。
ベッドの反対側の端に横になった。
「A、ライト眩しい」
「文句言わないでください」
「真っ暗でも何もしないって」
「嫌なら廊下に放り出しますよ」
わかったよこえーな、と大我さんも溜息をつく。
目を瞑った。
視界が遮られると、別の感覚が急に研ぎ澄まされてきてしまう。
大我さんの息遣い。
シーツの擦れる音。
体のどこも触れ合ってはいないのに、背中越しに彼の体温が伝わってくる気がする。
どうしよう。
眠れない。
息が苦しい。
この街の遠い記憶に苦しめられているのだろうか。
すぐ後ろに大我さんがいるから苦しいのか。
分からなかった。
目を開けていたいけれど、早く寝てしまいたくもある。
どうしたらいいんだろう。
半ば混乱しながら、さらに強く目を瞑った。
「A」
大我さんが突然私を呼んだ。
何かがシーツの上を這う気配がする。
咄嗟にぎゅっと体を縮めた。
「……手」
声の届き方からすると、彼は壁側を向いたままのようだった。
息を殺し、こちらの反応をじっと待っているのが伝わってくる。
少し考えてから、私は右手をそっと後ろに回した。
少しずつ、腕を伸ばして。
シーツの上、探るように小さく動かす。
覚えのある冷たさが指先に触れた。
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爽 - 続編消えたと思って焦りましたw続き読んだらドキドキし過ぎて一瞬で持ってかれました。 (2021年7月26日 14時) (
レス) id: 69f8ee2e96 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - 爽さん» だいぶ大人なお話になってきましたが、今後ともよろしくお願いします！ (2021年7月22日 21時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
爽 - キャンディタフトとは違った少し大人なこの作品も好きだなって思いながら毎回楽しみなです。 (2021年7月14日 14時) (レス) id: 9c49d7f5d5 (このIDを非表示/違反報告)
真澄(プロフ) - みなこさん» コメントありがとうございます。16章は２人の距離がすごく縮まっていくのでぜひ読んで頂きたいです！ (2021年7月3日 8時) (レス) id: e861df9d71 (このIDを非表示/違反報告)
みなこ(プロフ) - 二人の距離がもどかしくてすごく続きが気になります笑 (2021年6月30日 0時) (レス) id: 58140af225 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真澄
| 作者ホームページ：https://twitter.com/masumi_chu
作成日時：2021年5月21日 14時
