★ (ページ35)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:10,088 hit

彼の人生で生きたいなんて無謀なことページ35

.

今日は終業式で、とうとう夏休みが始まろうとしていた。
　
あの日、私からキスをした日から 1週間も経っていなかった。
　
　
　
.

薄めにストライプ柄、淡い桃色のシャツをえんじ色のネクタイで引き締めた河井先生の横で、子供のようにうきうきしている表情を浮かべる川西先生がいた。
　
先生を見ると “あの日” を思い出して、胸が苦しくて泣きそうになるのに、先生の視界からわたしはいなくなったかのように避けられているんだからもう終わりだ。キスをしても「好き」だと告げても、所詮子供の恋愛ごっこに付き合わされたとでも思っているのか、はじめから何にも、はじまってなんかいなかった。
　
　
　
.

今期最後だからと、小学生みたいに先生たちが校門まで出てきて、「さようなら」のあいさつをする。
　
秋山先生、水田先生、河井先生、山名先生…。ああほらもう、ここにもいないんなら確実だね。
　
　
　
光「A、やまだが先に行ってて、てさ、…A、？」
　
　
放課後、クラスみんなでカラオケ行こう、と誘いに珍しく乗ったのは
　
　
A「ん？ …うん、靴ひも結んでた、」
　
　
　
.

光「大丈夫～？ってちゃんと結べてね～じゃん、ちょっとこれ持ってて」
　
　
　
少し遅れたようすの川西先生の横に、カウンセラーの先生、譜久村先生がいて。
　
河井先生からの耳打ちに、変わらないだいすきな笑顔で答えてた川西先生と、さりげなく会話に入る譜久村先生が、あまりにも大人の世界すぎて、、
　
　
　
.

光「……よっし、できた。かばん持っててくれてありがと、…じゃ、」
　
A「うん、行こっか。」
　
　
　
正面校門からは出ずに、裏口まで回って出た。