妖怪㐂伝、虹の岡［all］ (ページ1)

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夏の思い出ページ1

黄side

_祖母が死んだ

八月二日

地球温暖化の影響か、今年は記録的猛暑らしい

木々に留まる蝉達の声が何重にも重なって、
気を取られるとおかしくなりそうで車の音楽の音量を上げた

「淳太ー、お茶とって」

黄「はいよ」

俺、中間淳太は先日亡くなった祖母の葬式のため、
母親の実家である田舎に訪れた

なんもない

まさにそんな言葉が似合うとこで
遊びに来たわけやないけどさ、まじで田舎やなぁ

黄「……うわっ、！」

坂もない平らな田んぼ道、足がもつれて転びそうになった

てか、押された？

けけけけっ

くすくすくす

黄「……？」

「どしたん？」

黄「いや、なんも…」

風は吹いていないのに、草むらが大きく揺れていた

黄「ありがとうございました…」

明朗快活な、老いを感じない人だった。

弱い顔なんて見せず、悩みなんか笑って吹き飛ばす
もちろん尊敬していたが、どこか遠い人

まぁ実際遠い人になってしまったんやけど

こんな不謹慎なつぶやき聞かれたら叱られるな

葬式には沢山の人が参列していて、
彼女の人柄を改めて実感する

泣きながら祖母との思い出を話す母達に、
携帯をいじりながら耳を傾けていた

態度悪いかもしれへんけど、まじで関わりないんやって

「あんた、やる事ないならこれお寺さんに持ってって」

黄「なんやこれ」

「おばあちゃんの遺品。供養してもらう用のやつ。
虹の岡わかるやろ？山のてっぺんにあるから」

黄「ん、わかった」

里帰りの滞在は長い
この辺りの土地感を知っとくべきなのかもしれない

俺はTシャツとジーパンに、サンダルを履き
ケータイと籠だけを持って外に出た

黄「……あっつ！！」

出る前に水飲んどきゃよかった

自販機もないし川の水を飲むほどワイルドじゃない

運悪くお寺は山の奥の奥
急な斜面にたまに足を取られそうになる

黄「…っ、あかん！一旦休憩……」

森の茂み、いい感じの岩があったから座らせてもらう

あぁ…まだ日陰で涼しいわ…

ミーンミンミンミン

蝉の声、、よう鳴くなぁ

ひとのこ

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