とあるメイドの恋事情【尾関光希】 (ページ38)

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38話ページ38

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なぜ会う度に彼のペースに乗せられるんだろう

おやすみなさい。とまた一方的に別れを告げられた

そう、一方的

強引で、自信家で、根拠もないのに何故か説得力があって

思わず納得して頷きそうになってしまう

「ん？どうかした？」

『あ、ううん！なんでもない！』

危ない危ない、今はデート中だった

この人は私の元同僚。たまたま再会して思い出話に花を咲かせていたら、映画と食事に誘われたのだ

私の前職は、ホテルの厨房だった

支配人はホテルを全国に名をとどろかせようと奮闘していて、私達もそこに必死に着いてきた

「にしても辛かったなぁ〜！俺一番後に入ったじゃん？毎日皿洗いとキャベツの千切りで、、未だにトンカツ見ると寒気するもん」

『あっはは、私も！漫画みたいにこう、山盛りで！』

一人下っ端がいて、その後に私、次に彼と

雑用三人衆でお互いを高め合いながら、切磋琢磨してきた仲間たちだった

「よく料理の味見付き合ってたなぁ。Aのが一番美味かった」

『そんなこと…ま、確かに貴方よりはね？』

「俺だって今は成長したわ！」

でも本当に辛かった

幹部たちは結果に囚われすぎていた
きつい労働環境に、割に合わない給料

ついていけないと辞めた先輩たちも多かった

それでも私たちは負けずに、プロの料理人になるんだと頑張ってきた

それでも、ダメだった

売上は右肩下がりで没落、経営破綻

ホテルは直に畳むこととなってしまった

転職先を考えている時期に、私は今のご主人様と出会ったのだ

「あの！お客様が、さっきのスープを作った者を呼んで欲しいと」

『……はい。』

泰「さっきのスープは、君か？」

『私です。』

泰「美味かった。懐かしい味がして、心に染みたよ

もし良かったら、家に来ないか」

『…えっ、』

本当に感謝している。今でもあのスープのレシピは頭から離れないように、何度も作り続けているんだ

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