とあるメイドの恋事情【尾関光希】 (ページ27)

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27話ページ27

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秀「A、ちょっといいかな」

嫌な予感

この人のちょっといいかなは怖い。特に最近はあの人の話題で持ち切りだ

正々堂々勝負と言ったのに。今度はなんだ

食事か？職場に来いか？それともいよいよ写真要求してきたか？

秀「楠木のことなんだけど…」

『あら失礼』

秀「その、本人も言ってたんだけど楠木の背中に鯉の」

『刺青ですか？はい存じております』

秀「えぇ〜Aは気にすると思ったのに」

それぐらいで狼狽えるほど弱々しくないし、態度を変えるほど頑固者ではない。と伝えると俺への当てつけ!?と怒られた。思ってらしたのですか？

秀「……とにかく！楠木には注意して！飲み込まれないでね！」

『はい？あ、ちょっと！』

なんのことやら

この時の私は、秀作様が楠木に嫉妬というか脅威というか、ただならぬ印象を持ち、楠木がこの家を乗っ取るつもりだなんて馬鹿みたいな発想をしていることなど、考えもしないのでした

今日は節分

ご主人様の教育論に沿っているのかしっかり行事に参加する

小岩井さんに年齢の数の大豆を取り分けて赤と青のお面を用意してもらっている間に私は恵方巻きの準備

楠木はテーブルを今年の方角にセットした

小「今年は南南東を向いてお召し上がりください
食べ終わりましたらこちらのベルでお知らせいただきますでしょうか。ベルの合図で鬼がやってきます」

知「今年も美味しそう。Aありがとうね」

『有り難きお言葉。失礼します』

奥に控えて扉を閉めると、お面をつけて棍棒を担いだ二人

私はさすがにやる訳にはいかないらしい。待遇ありがとうございます

知「とにかく！お見合いなんか絶対行かないから」

チーン♪

『あ、鳴りましたね』

泰「待ちなさい！話はまだ終わっていないぞ！」

早歩きで部屋に戻っていったお嬢様

ダイニングルームには鬼に怒りと共に豆をぶつけるご主人様と、呆れて棒読みでささやかに投げる坊ちゃん

そして両手に恵方巻きを持ちほうばる博文様

コンコン

『…知晶様。』

知「…なに」

『…お食事をお持ちしました。恵方巻き、召し上がっていらっしゃらなかったので』

知「ドアの前置いといて。…後で食べるから」

『…お嬢様、四十田は、いつまでもお嬢様の幸せを願っております』

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