とあるメイドの恋事情【尾関光希】 (ページ18)

今日:9 hit、昨日:9 hit、合計:28,198 hit

18話ページ18

.

気を取り直して、LINEのトーク画面を覗く

こう見ると意外と会話はしていたんだなぁと気づく

するとある部分で指はピタリと止まり、ここですと指した

1月1日(木)

四十田A

〜〜〜、〜。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

尾「ね？本年も」

いや、

『ただの新年の常套句です！』

尾「面と向かっては言えないけど僕とのメッセージのやり取りでこそ正直になれる。違いますか？」

『違います！どこからその自信は生まれるんですか！』

尾「ご安心を。僕のもAさん専用の新年の常套句です。約束通り、今年は一緒に年を越しましょう」

『常套句も何も、お互いあけましておめでとうと言ったのは今年初め』

尾「では尚更、来年も十年後も言いましょう！今度はLINEではなく直接会って」

これほどまでに自分の発言を恨んだことはない

私は別に口と脳が直結してるようなタイプではないはずだ

なのに、さっきから私は、この人の火を焚きつける着火剤じゃないか！

言葉が出てこず、口をパクパクさせるしかない私にさらに詰め寄る

尾「もう貴女の照れ隠しには騙されません。距離を置けるものなら置いてみてください。

俺が追いかけて、必ず捕まえてみせます」

以上です。どうぞ

ひとりで満足したようで、ドアの鍵を開けて、椅子を元ある場所に戻していく

なんだか、一週間にわたる取り調べを受けたみたい

それぐらい疲れた

一方的で高圧的だった？そんなんこの人に比べたら

何十倍もマシだ！

尾「あ、最後に」

『もうなんです…っ！』

ふいに後ろへ引っ張られる。引き寄せられて、胸に頰があたった

腕が背中に回り、強く抱きしめてくる

『ちょっ、なんですか！離してっ、』

尾「会った時からずっと抑えていたんです。昂って、さっきまで必死に我慢してた…」

『知るかっ！』

尾「うっ」

さすが弁慶の泣き所。どんなに屈強な男でも弱点となる

お嬢様、教えてくださりありがとうございます

荷物を抱えて小走りで逃げた

途中、これを引き起こした発端の秀作様と会ったので

『今後一切、弁当は届けませんから！！』

と吐き捨てて帰った

.