妖怪㐂伝、虹の岡［all］〜漆〜

わらしのおつかい ページ43

緑side



緑「………ん、……けほっけほっ」




…どこや……縛られとるし


手と足が縄で縛られて口には手ぬぐいが覆われてきつく結ばれてる

芋虫みたいに体を動かして、くっ、上手く起き上がれん。手を支えにして何とか座ることに成功した

…たしか、ここはお団子屋の倉庫のはず。でも正確には完成された団子はひとつもなく、小豆やお米の保管の蔵や

あ、、他にも人がおる！




緑「んん！」


「……ぁ、…お父さん、目を覚ましましたよ！」



俺みたいに縛られたおばちゃんが同じく縛られてる隣のおじさんに声をかける。二人とも眠ってたんやなぁ。壁に布をゴリゴリ擦り布を取ると、おじさんも起きて目をパチパチさせていた



「すまんなぁ。こんな小さい子まで巻き込むなんて」


緑「おじちゃんたち、だれ？」


「ここのお店をやってんねんで」


緑「じゃああの男の人たちは…？」


「押し入りの盗人や。寝てる最中に襲われて、俺たちを縛って閉じ込めた後に金だけ盗んで逃げようとしたんやろ…」




あっくんが言ってた。この世には良い人もいるけど、悪い人もおるって。色んな感情が入り交じって、外れた道を進んでまうことがあるんやって

…人間は複雑やって




「何もせんと出てくのを待とう。怪我なしで生き残るのが何よりや」


緑「…でも、お金は」


「お金はいつでも取り返せるけど、命は一個。僕も終わったら早くお母さんのとこに帰り。それまでは大人がちゃんと守るでな？」



…それでも、悪いやつを逃すのはあかん

それに奥さんが言ったみたいに命は一個。俺は何されても大丈夫やけど、この人たちは人間や

それに…多分あいつらはまだ隣の部屋にいる。まだ物音がしてる。俺も閉じ込めたんやったらさっさと逃げればええのに

俺と会った時にはもう既に逃げようとしていた。てことは俺が来たことで予定が狂ったってことや。他に目的が…



「どうした、お腹痛いんか…？」


「大変っ、朝が冷えるから…！かけるもの何か…」



…この人たちを、守らないと。まずはこの縄を解かな




……お願いしたら、もしかしたら





この部屋に刃物があればな



たまたま見つけて、俺の手元に落ちてくれたら



そしたら…そしたら……




奥さんが俺にかけるために、商品を包むための布を口に加え、ぐいっと引っ張った




コトン




緑「あっ、！」





はさみや！




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