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イグニス2 ページ10

俺はフードを目深にかぶり、闇と化した世界を歩いていた。そこら中にシガイがうじゃうじゃとしているがやつらは俺に見向きもしない。

そして今ハンマーヘッドへと向かうため、ただひたすらに足を動かしている。

俺が眠っていた場所はカエムにあるイリス達が利用していた家だった。家は木造だったが割と丈夫に見えていたのに、屋根も、壁も床もところどころが腐り、むせそうなほどのカビの臭いが充満していた。

家の中を調べたがどこも同じ有様で人のいる形跡はない。アーデンに「無理しちゃダメだよ」と言われたがその言葉でなおの事イラついた俺は重い体を引きずりながら家を出て、とりあえず知人のいるハンマーヘッドへ向かうことにした。

体を動かすにつれてだんだんと重みは抜けていき、むしろ生きていた中で一番体が軽いような気さえする。

「ちょっとあんた!」

エンジン音が遠くからしているのは気づいていたが、その車はトラックで、一瞬俺を追い抜き、そしてすぐに停車すると窓から顔を出して声をかけてきた。

声をかけてきたのはガタイのいい中年の男のようで。

「こんなシガイだらけの中ちんたら歩いてんなよ!死にてーのか?!さっさと乗れ!」

いや、俺は…。

「俺は歩いていくからいい」と断ろうとしているのに俺の言葉も聞かず、車から降りてくると腕をつかまれて車内に連れ込まれる。

シートベルトを着けるように言われ、しぶしぶつけると車は勢いよく走りだした。

「死のうだなんて考えるんじゃねえよ…、こんな世界になっちまったけどよ」

こんな世界か…。
トラックの小さな窓から外を見る。

真っ暗で、明かりといえば冷たそうに輝く青い月だけだった。暗闇に慣れた目はうごめくやつらをとらえるとすぐに視線を前に戻す。

「これからハンマーヘッドに向かうんだ。お前も来い。悪いようにはしねえから」

あまり人には会いたくなかったがこうなってしまった以上仕方がない、それにこの人はハンマーヘッドへ向かうようなのでこちらとしては大助かりだ。フードをさらに深くかぶり直し、できるだけ体を小さくして目的地への到着を待った。

.
.
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「おーい、起きろよ」

俺は体をゆすられて目を覚ます。フロントガラスを見るとまぶしい光が突然目に飛び込んできて目を細める。運転席に座っていた男に促されて車から降りる。

あれ…。

辺りを見渡して俺は目を丸くしたのだった。

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作者名:オチャネコ | 作成日時:2019年10月22日 12時

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