FF15短編集【男主】 (ページ5)

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イグニス　２ページ5

店に入ってすぐにショーケースを眺め、目新しい商品を購入すると席に座った。

見た目も映しておきたいという彼の代わりに俺のスマートフォンで撮影を行ってからフォークを入れる。

自分の目の前にあるケーキをフォークでつつきながら、イグニスを見ていると少し食べては首を傾げ、もう一口食べては頷き。まるで旅先で食べていた料理を観察しているのと同じ動きに懐かしさを感じ、自然にか口元がにやけてしまう。

「どうかしたか？」

俺のにやけた顔をみてか、それともケーキを食べない事への突っ込みなのかわからなかったが、不思議そうな顔をしてくるので「懐かしいと思って」と伝えると一瞬目を見開いたがすぐに形のいい唇に笑みを浮かべる。

「そうだな、こうして誰かとゆっくり過ごすのは久々だ」

「あのキャンプ以来か？」いいながら彼は視線を落として目を細めた。

たぶん思い出しているのはルシス奪還前夜の事だろう。奪還後すぐに復興に向けて動き出したためこうしてゆっくりするのは本当に久々だった。

自分の部屋で睡眠が取れたら幸せというくらいの多忙さで、食事をとってる最中に寝たりなんて言うのはざらだった。そのおかげでどこでも眠れる体になったのはいいのか悪いのか…。

「陛下には休暇というものはないが、いつかまた皆で食事をとれる日が来るといいな」

そうだなと、相槌を打つと彼はまたケーキを食べ始める。

この人は本当にノクトの事が好きなんだな…それにみんなの事も。

皆と食事できるのはうれしいし、また昔みたいに集まることができればどれだけいい事なのかも分かっているつもりなのだが…。

ケーキを食べるふりをしてイグニスを盗み見ると、今度は別のケーキで先ほどと同じように首を傾げたりしている。

旅の途中、俺は彼の世話焼きなところも、たまに拗ねるところも、なにより彼の一途さに俺は心が惹かれてしまっていた。こうやって何かを観察しているときの姿も好きで何かに見とれている姿に自分も見とれていた。

こうやって二人で何かするのは実は今日が始めての事で少々浮かれていたのだが、やっぱりこの人の中で一番を占めているのはノクティス陛下なのだとわかり、仕方のない事だとわかっていながら力が抜けてしまっている自分がいて。

「ついてるぞ」

食べずにもじもじしているのもよくないと思い口に入れると、彼の声に顔を上げた。