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イグニス(EP後の話) ページ1

ASide

陛下となったノクティスは行事やルシス復興の務めに明け暮れていた。そんな陛下を支えるのは自分の役目でもある…のだが、俺は大したことはしていなかった。

大体の事はイグニスがなんでもかんでもこなしてしまい、ちょっとした買い物を頼まれたり、陛下のお目付け役として近くで突っ立っていたり…、と、本当に給料分を働いているのか不安になる。

「待ってたぜ」

そう砕けて話すのは陛下であるノクティスだった。今しがた突然王の間に来るようにと伝令が届き急ぎ駆けつけたのだがすでにそこにはすらりとした長身の男が立っていた。

来るの遅かったかなと扉の前でしどろもどろしていると、長身の男イグニスが少しだけこちらに顔を向け「早く」と唇の動きだけで訴えてくる。俺は弾かれたように彼に隣にまで駆け寄ると、丁寧にお辞儀する。

すると頭上から耐えれないというような吹き出したような笑い声が聞こえた。

「顔上げろって、つーかその頭寝ぐせか?」

えっ?!

お辞儀をしたままの状態で後頭部に手をやると確かに手に当たるはねている感覚。そうだ、俺は今日寝坊して髪を手で乱暴にとかしただけだった。寝ぐせがひどいのでいつもは時間をかけて丁寧にとかさないといけなかった。

この髪型で警備をして街の巡回もしてきたっていうのに…。顔を上げろと言われたが恥ずかしすぎて中々上げることができずにいると、俺の髪を抑える手ごと頭をなでられる。

「顔をあげるんだ」

そう冷静な声で言うのはイグニスで、彼は本当に陛下に忠実な人間だし律儀だし礼儀も正しい。陛下の意向に行動を起こさない俺にしびれを切らしているのだろうか、声にはそれは感じ取れないが表情や感情を隠すことも彼にとってはお手の物だった。ノクティスが陛下になって以降それがますます強化されて行っている気がする。恐る恐る顔を上げるとやけににやけている陛下と目が合う。

「イグニス、髪といてやれよ」

「承知いたしました。こちらに背を…」

自分でできるというが聞く気がないらしい。無理やり体を回転させられ撫でるように髪をとかれていく。

「髪が伸びだな」

かすかにそう聞こえた気がして振り向くと、唇にうっすらと笑みを浮かべるイグニスがいたのだった。陛下が横目にさらに笑みを深めている頃、俺はその笑みに見入ってしまっていたのだった。

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作者名:オチャネコ | 作成日時:2019年10月22日 12時

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